広報活動

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2015年6月18日

理化学研究所

光遺伝学によってマウスのうつ状態を改善

―楽しかった記憶を光で活性化―

楽しい記憶の活性化によるうつ様行動の改善の図

楽しい記憶の活性化によるうつ様行動の改善

うつ病は、現代社会が生み出す多様なストレスも要因の一つといわれており、近年大きな社会問題となっています。しかし、一般的に使われている治療薬や治療法の効果は個人差が大きく、うつ病の克服はなかなか難しいのが現状です。理化学研究所の研究チームは2014年に、マウスを対象に光遺伝学という手法を使って、嫌な記憶を楽しい体験の記憶に書き換えることに成功しています。うつ病では、過去の楽しい体験を正しく思い出せなくなる、という特徴があることから、研究チームは「過去の楽しい体験の記憶に関わる神経細胞を活性化することで、うつ病の症状を改善できないか」と考えました。

研究チームは、オスのマウスにメスのマウスと過ごすという“楽しい”体験をさせ、そのときに活動した脳の海馬体にある歯状回という部位の神経細胞を遺伝学的手法で標識しました。この手法で標識をすると、実験者が望むタイミングで光をあてることで、標識した細胞を活性化することが可能になります。次に、そのオスのマウスに体を固定するという慢性ストレスを与え、「嫌な刺激を回避する行動が減る」、「本来なら好む甘い砂糖水を好まなくなる」という行動に示されるような“うつ状態”が引き起こされるようにしました。このうつ状態のマウスの、楽しい体験の記憶として標識した歯状回の神経細胞に光をあてて神経活動を活性化したところ、嫌な刺激を回避する行動が再び現れ、砂糖水も再び好むようになるという、うつ状態の改善がみられました。また、このうつ状態の改善は、恐怖や喜びなどの情動の記憶に関わる「扁桃体」や、やる気や意欲、報酬を得たときに感じる喜びなどに関わる「側坐核」という領域につながる回路の活動によるものであることが分かりました。

これは、光による神経細胞群の活性化によって、過去の楽しい体験の中で実際に感じた喜びの記憶や感覚が呼び起こされて、症状が改善したことを示しています。この成果は、今後のうつ病の新しい治療法開発に役立つかも知れません。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 理研-MIT神経回路遺伝学研究センター
センター長 利根川 進 (とねがわ すすむ)
博士課程 Steve Ramirez (スティーブ・ラミレス)