広報活動

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2015年7月15日

理化学研究所

ミナトカモジグサとコムギの蓄積代謝物の共通点と相違点を解明

-草本バイオマス研究と麦類研究を加速させる研究基盤を提供-

ミナトカモジグサの生活環

ミナトカモジグサの一生

植物科学の研究に欠かせない実験植物。その中でもスーパー実験植物と呼ばれているのが「シロイヌナズナ」です。ゲノムの解読が完了しており、実験室で栽培が可能かつ次世代の種子をつけるサイクルがわずか2カ月程度、これらの長所を武器に圧倒的なシェアを誇っています。しかし、シロイヌナズナは双子葉植物です。例えば、人口増加や環境変動による食料問題を解決すべく穀物の増産の研究をするとしたら、イネやコムギ、トウモロコシなど単子葉植物を扱わなければならず、植物系統が進化的に離れているシロイヌナズナで得た情報は、そのまま単子葉植物に当てはまりません。そこで最近、注目されているのが「ミナトカモジグサ」という単子葉植物です。実験室栽培が可能、3カ月で次の世代の種子が得られるなど、シロイヌナズナに匹敵する実験植物としての“資質”を備えています。ただ、種や系統の違いによって生育条件が異なるため、実験植物として他の単子葉植物と正しく比較できるようにするために、生育段階を定義した「生育スケール」が必要でした。

理研の研究者を中心とした研究グループは、コムギをはじめとする植物の形態的特徴を基準に定義された生育スケールを、ミナトカモジグサに適用しました。種子から芽生え、開花、結実という植物の一生の生育段階を調べたところ、ミナトカモジグサでも生育スケールが利用可能なことが分かりました。そこで、この生育スケールを用いて定義した生育段階と環境ストレスの条件別に、細胞内の代謝産物を網羅的かつ個別に定量して解析する「ワイドターゲットメタボローム解析」という手法を用い、ミナトカモジグサとコムギの蓄積代謝物の比較を行いました。その結果、ミナトカモジグサとコムギとは蓄積代謝物に多くの共通点があり、ミナトカモジグサがコムギなど麦類を研究するためのモデル実験植物として適していると考えられました。

研究グループは、この研究で定義したミナトカモジグサの生育スケールを、イメージライブラリーとしてインターネット上に公開しました。このライブラリーは、異なる施設やプロジェクトで収集されたミナトカモジグサの実験データを比較・統合することに役立ちます。また、蓄積代謝物のデータ比較が進めば、麦類の基礎研究の発展にもつながると期待できます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター バイオマス工学研究部門 セルロース生産研究チーム
チームリーダー 持田 恵一 (もちだ けいいち)
特別研究員 恩田 義彦 (おんだ よしひこ)