広報活動

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2015年8月13日

理化学研究所
東京大学

反陽子と陽子の質量を一千億分の一の超高精度で決定

-空間の一様性や反物質に働く重力研究にも新たな知見-

概略図

測定に用いたペニングトラップの概略図

ビッグバンで生成される物質と反物質が正確に等量であることを、現在の物理学の基礎になっている標準模型(自然界で知られている4つの相互作用のうち、重力相互作用を除いた、電磁的相互作用、弱い相互作用、強い相互作用の3つを記述する理論)が予言しています。しかし、宇宙は物質ばかりで、反物質は見当たりません。なぜ、反物質が消えたのか…?この謎を解くカギの一つが「CPT対称性」であるといわれています。CPT対称性は物理学の最も基本的な対称性で、荷電共役変換(C)、空間反転(P)、時間反転(T)の3つの変換を同時に行うことを意味します。物質と反物質の振る舞いに違いが見つかれば、CPT対称が破れていることを意味します。

従来、この領域の研究は大型加速器を使って、よりエネルギーの高い粒子を生成することで進められてきました。しかし、施設の大型化にはコスト面ばかりで無く規模自体にも制限があるため、それを補う研究アプローチとして粒子の超高精度計測が注目されています。

理研の研究者などで構成された国際共同研究グループは、代表的な反物質である「反陽子」を用い、その性質が代表的な物質である「陽子」とまったく同じなのか、それとも何らかの違いがあるのかを高精度でテストしました。反陽子と水素イオンのサイクロトロン周波数を高精度で決定できる手法を採用し、さらに超高感度な計測系を開発しました。これにより、反陽子や陽子の質量電荷比の高精度測定に要する時間を、これまでの70分の1に短縮できました。測定の結果、両者は1千億分の1の程度の非常に高い精度で一致していることが明らかになりました。

得られた精度は、陽子と反陽子を用いたCPT対称性テストとしては世界最高の値です。また、反半物質と物質の間に働く重力(今回の実験では、反陽子と地球の間に働く重力)が物質間に働く重力(陽子と地球の間に働く重力)と8.7×10-7で一致していること、日周変化が7.2x10-10以下であることも示しました。今後は、反陽子の磁気モーメントをppbレベル高精度で測定し、CTP対称性テストの高精度化を図ります。

理化学研究所
国際主幹研究ユニット・特別研究ユニット Ulmer国際主幹研究ユニット
ユニットリーダー Stefan Ulmer (ステファン・ウルマー)

国際主幹研究ユニット・特別研究ユニット 原子物理特別研究ユニット
ユニットリーダー 山崎 泰規 (やまざき やすのり)