広報活動

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2015年9月1日

理化学研究所

神経細胞の形態の複雑さを決める新しい因子を発見

-樹状突起の形成を抑制する因子とそのメカニズムを同定-

クラス特異的な樹状突起形成のメカニズムの図

図 クラス特異的な樹状突起形成のメカニズム

私たちの脳や身体には数多くの神経細胞があり、樹状突起という枝分かれした細長い突起を伸ばして互いにつながって、複雑な神経ネットワークを作っています。樹状突起の分岐の複雑さは神経細胞のタイプによって異なります。例えば、ショウジョウバエの感覚神経であるdaニューロンは、単純なもの(クラスⅠ)から複雑なもの(クラスⅣ)まで、4つにクラス分けされています。これまでの研究によって、単純なクラスのdaニューロンでは、Abruptという転写因子が樹状突起の形成を抑えていることが知られています。しかし、この転写因子がどのように樹状突起の形を決めているのか、その仕組みは分かっていません。

理研の研究者を中心とした国際共同研究グループは、ショウジョウバエを使い、「細胞の形態を維持している細胞骨格の1つである微小管をAbruptなどの転写因子が制御することで、樹状突起の形が決まる」という仮説を立て、そのメカニズムを解明しようとしました。

微小管は、チューブリンというタンパク質が結合したり分離したりすることで伸縮します。微小管には極性があり、チューブリンが活発に結合や分離を繰り返す側をプラス端、反対側をマイナス端といいます。マイナス端は安定な状態で存在するため、微小管構造の状態を反映します。そこで、国際研究グループは、マイナス端の位置を可視化できる遺伝子改変ハエを作成し、各クラスのdaニューロン内の微小管を観察しました。その結果、樹状突起の分岐が複雑なクラスⅣのdaニューロンでは微小管が樹状突起内に散らばっているのに対し、分岐が単純なクラスⅠのdaニューロンの微小管は、樹状突起内の特定の場所に集積していることが分かりました。この結果は、クラスによって微小管構造に違いがあることを示します。さらに、Abruptが働かない変異体のハエではクラスⅠのdaニューロンの微小管構造がクラスⅣと同じような構造を示すことから、クラスによって決まる微小管構造の違いは、転写因子のAbruptで制御されると結論付けました。

そこで、転写因子Adによって活性化され微小管構造の調節に関わる遺伝子を系統的に調べたところ、セントロソーミン(Cnn)というタンパク質を作る遺伝子が活性化していることが分かりました。樹状突起が伸びていくときに、断片状のゴルジ体(細胞小器官の1つ)は微小管が重合するための核になるとされています。このことから、セントロソーミンは微小管重合プロセスを促進し、樹状突起の先端とは反対の方向に微小管の重合を促すことで、樹状突起の形成を抑制していることが明らかになりました。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 神経形態遺伝学研究チーム
チームリーダー エイドリアン・ムーア (Adrian Moore)
研究員 カグリ・ヤルギン (Cagri Yalgin)(研究当時)