広報活動

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2015年9月26日

理化学研究所

アト秒領域の超高速分子内電子状態を直接観測

-化学反応のアト秒実時間観測・制御が可能に-

図

アト秒電子波束の直接観測

全ての物質は原子核と電子でできていて、あらゆる化学反応は、電子の移動が原子核の位置の変化を引き起こすことで始まります。しかし、電子が原子核から隣の原子核に移動する間、多くの場合、原子核の位置は全く変わっていないように見えます。それは、原子核と電子では質量が大きく異なり、速度差が非常に大きいからです。化学反応を理解する上で、分子内の電子の動きをリアルアイムで詳細に観測することは重要ですが、それにはアト秒(1アト秒は100京分の1秒=10-18秒)領域の極めて速いシャッタースピードをもつ短い波長のパルスが必要です。しかし、充分な明るさを持つアト秒パルスは発生が困難であり、また、それで得られる情報を取得する手法も開発されていませんでした。

理研の研究チームは、ここ約10年の間、分子内の電子の動きを直接観測するために、「高強度のアト秒パルス列の発生法」と、アト秒パルスの電場波形の測定と分子の非線形応答の両方が得られる手法である「アト秒非線形フーリエ分光法」の開発を行ってきました。理研独自の高強度アト秒パルス発生法に、高安定で高精度なアト秒領域の空間分割型干渉計と高い信号/雑音比が得られる速度投影型運動量画像計測装置を組み合わせることで、アト秒領域の電子状態の変化を観測することに挑みました。

研究チームは、この観測手法を用いて、500アト秒の周期で起きる窒素分子内の電子状態の変化を直接観察することに成功しました。開発した手法を用いることで、化学反応を電子レベルで理解することが可能になります。将来的には、紫外線照射時のDNA損傷メカニズムの解明、触媒反応の基礎反応過程の解明、光合成反応初期過程の解明などにつながるものと期待されます。さらに、アト秒領域の電子運動を自由に操作できるようになれば、化学反応を自在に制御でき、これまでにない性質をもつ物資の作成が可能になるかもしれません。

理化学研究所
光量子工学研究領域 エクストリームフォトニクス研究グループ アト秒科学研究チーム
研究員 沖野 友哉 (おきの ともや)
チームリーダー 緑川 克美 (みどりかわ かつみ)