広報活動

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2015年11月20日

理化学研究所
自然科学研究機構 基礎生物学研究所
革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト
日本医療研究開発機構

霊長類の大脳皮質で多細胞活動を長期間・同時計測

-詳細な脳機能マップ作製のための基盤技術を開発-

図

マーモセット大脳皮質神経細胞の長期的観察

左図:テトラサイクリン発現誘導システムを組み込んだウイルスベクターを注入してから10日後に観察した神経細胞群。黄色い矢頭が細胞体を示している。
右図:同じ場所をウイルスベクター注入してから113日後に観察した神経細胞群。細胞体の並びが10日後と同じであることが分かる。

南米に生息するサルは「新世界ザル」と呼ばれていますが、マーモセットもその一種です。マーモットは、ヒトと共通性がある高度に発達した脳をもち、小型で飼育が容易なうえ繁殖性にも富みます。霊長類脳研究は、ヒトがもつ高次の脳機能メカニズムを解明するために不可欠であり、マーモセットはそのモデル動物として注目されています。

マーモセットを使って霊長類の神経ネットワークを解き明かそうとする試みが、日本でも2014年から始まり、霊長類遺伝子改変技術の分野では世界をリードする存在になっています。それが「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(革新脳プロジェクト)」です。同プロジェクトは、米国やEUなどのプロジェクトとともに世界的に推進されている脳機能の統合的理解を目指す試みの中の1つとされています。今回、理研の研究者を中心とした研究チームは、マーモセットの大脳皮質を単一細胞レベルで、多細胞の神経活動を長時間にわたって計測・解析することを目指しました。

細胞レベルでの大規模な脳機能の解析には、これまで蛍光カルシウムセンサーを神経細胞に発現させ、顕微鏡で観察する手法が使われていました。しかし、げっ歯類で使われているこの方法を霊長類に応用しようとしても、蛍光カルシウムの発現が低いため顕微鏡での観察は困難でした。そこで、研究チームは、テトラサイクリン発現誘導システムと呼ばれる遺伝子発現誘導システムを用いて、蛍光カルシウムセンサー蛋白質の発現を増幅することにしました。その結果、マーモセットの大脳皮質で触覚など体の感覚情報を処理する体性感覚野で、数百個の神経細胞の活動を同時に計測することに成功しました。同一の神経細胞を100日以上という長期間、継続的に観察することも可能にしました。また、神経細胞の細胞体だけでなく、他の神経細胞から情報を入力する樹状突起や、他の細胞へ情報を出力する軸索からの体性感覚応答の計測にも成功しました。

今回開発した計測技術を用いた研究により、知覚、運動、認知など霊長類の脳機能の基盤となる神経ネットワークの理解が進展すると考えられます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 脳機能ネットワークの包括的解明プロジェクト 高次脳機能分子解析チーム
チームリーダー 山森 哲雄 (やまもり てつお)
研究員 定金 理 (さだかね おさむ)