広報活動

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2015年12月18日

理化学研究所
科学技術振興機構
和歌山県立医科大学

炎症反応を制御する新たな分子を発見

-過剰な炎症反応が起きないようにする仕組みの一端を解明-

炎症反応制御機構の図

PDLIM1およびPDLIM2による炎症反応制御機構

私たちの体をウイルスや細菌から守っているのが免疫系です。ウイルスや細菌が感染すると、樹状細胞(樹状の突起をもつ白血球)という免疫細胞が病原体を認識して“炎症反応”という免疫反応を起こし、侵入した病原体を攻撃します。ただ、何らかの要因で、この炎症反応が過剰に起きる状態が続くようになると、アレルギー疾患や自己免疫疾患を発症することも知られています。このことから、生体は免疫系を活性化するだけでなく、逆に抑制するシステムも備えていて、炎症反応が過剰にならないように調整していると考えられます。

樹状細胞が炎症反応を発動させるために重要な働きをしているのが「NF-κB」といわれる転写因子です。NF-κBは普段は細胞質に存在していますが、活性化されると核内に移動し、炎症性サイトカインなど炎症反応に必要なさまざまな遺伝子を活性化させ、炎症反応を誘導します。一方で、NF-κBの過剰活性が、炎症性疾患や自己免疫疾患を発症させる原因にもなります。理研の研究者は、2007年に核内タンパク質「PDLIM2」が、NF-κBの分解を誘導することによって炎症反応を抑制することを明らかにしています。PDLIM2は、炎症反応を抑制するため核内に移動したNF-κBにユビキチンというタンパク質を付加(ユビキチン化)します。ユビキチン化されたNF-κBはタンパク質分解酵素の標的になり、NF-κBは分解され炎症反応が抑制されます。

今回、共同研究チームは、PDLIM2と似た構造をもち、樹状細胞に強く発現している「PDLIM1」というタンパク質について、炎症反応の誘導をどのように調節しているかを、マウスを用いて調べました。その結果、PDLIM1はNF-κB と結合しNF-κBの核内への移動を妨げることで、炎症反応を抑制していることが分かりました。また、PDLIM1 によるNF-κBの核内移動の抑制には、PDLIM1が細胞骨格タンパク質であるアクチンに結合している「αアクチ二ン」というタンパク質と結合することが重要だと分かりました。PDLIM1を欠損させたマウスの樹状細胞ではNF-κBの核への移動が大幅に増え、正常なマウスに比べ、炎症性サイトカインの産生量が2~3倍に増えていました。

PDLIM1による炎症反応の抑制メカニズムの解明は、アレルギー疾患や自己免疫疾患の治療など人為的な免疫制御法の開発ターゲットになると期待できます。また、PDLIM1やPDLIM2などのタンパク質は炎症反応を制御するタンパク質の新しいファミリーであり、それぞれ異なるメカニズムで炎症反応を抑制していると考えられます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 炎症制御研究チーム
チームリーダー 田中 貴志 (たなか たかし)
大学院生リサーチ・アソシエイト 小野 瑠美子 (おの るみこ)