広報活動

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2016年2月1日

理化学研究所
高輝度光科学研究センター

XFELの光特性を非破壊で評価する手法を開発

-SACLAによる超高速現象研究の精度を大幅に向上-

XFELビーム診断システムの図

図 XFELビーム診断システム

「SACLA(さくら)」は理研と高輝度科学研究センターが兵庫県の播磨科学公園都市内に建設した日本で初めてのX線自由電子レーザー(XFEL)施設です。SACLAが生成する超高輝度のX線レーザーパルスは、発光時間が数フェムト秒(1フェムト秒は1000兆分の1秒)と極短に短く、観測対象の試料の中を高速で運動する原子や分子を、フラッシュで写真を撮るように捉え、直接観察できます。超高速現象を原子レベルで解明することで、自然現象や生命活動の根源を探ることにつながると期待されています。

観察対象の中で起きる高速現象を捉えるには時間分解計測法を用います。その中で最もポピュラーなものが「ポンプ・プローブ法」です。SACLAでは、ポンプ光(フェムト秒レーザー)を先に試料に照射して反応を誘起し、プローブ光(XFEL)で観察して、物質内の過渡的な超高速現象を追跡します。ポンプ光の照射からプローブ光の照射までの時間差を変化させながら観察すると、超高速現象の時間的な変化を調べることができます。しかし、2つのパルス光が試料に到達する時間の差を、1000兆分の数秒レベルで制御するのは非常に難しく「揺らぎ」が生じます。そのため、XFELの最大の特徴である短い発光時間を十分に生かすことができません。また、XFELの光特性の一つであるエネルギースペクトルもパルスごとに変化します。このような揺らぎが、分子や原子の動画撮影の際の大きなネックとなっていました。

XFELの特性を十分に生かし、より高精度な計測を行うには、実験と並行してXFELの「診断」行い、解析データを補正していく必要があります。しかし、これまでの光診断法はXFELビームを破壊するため、実験と並行して行うことができませんでした。

理研の研究者を中心とした国際共同研究グループは、透過型回折格子という光学素子を用いてXFELビームを分岐し、2つの回折光で時間差とエネルギースペクトルについて診断しながら、透過光で実験を行う手法を開発し、「XFELビーム診断システム」を構築しました。これによって、SACLAが持つ数フェムト秒という時間分解能を最大限に生かすことができるようになります。またXFELビーム診断システムは計測精度の向上だけでなく、XFEL光源の高度化に必須の光診断ツールとして重要な役割を果たすことが期待できます。

理化学研究所
放射光科学総合研究センター XFEL研究開発部門 ビームライン研究開発グループ ビームライン開発チーム
客員研究員 片山 哲夫 (かたやま てつお)
(高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 研究員)
チームリーダー 矢橋 牧名 (やばし まきな)