広報活動

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2016年2月16日

理化学研究所

糖鎖の新しい代謝機構を解明

-細胞質の脱糖鎖酵素ENGaseの新たな機能を発見-

脱糖鎖酵素ENGase欠損細胞で蓄積するリン酸化糖鎖の構造とENGaseの基質特異性の図

脱糖鎖酵素ENGase欠損細胞で蓄積するリン酸化糖鎖の構造とENGaseの基質特異性

細胞の中にはさまざまな構造がありますが、不要になったものを分解する役割をするのは、リソソームという小器官です。例えば、仕事が終わった糖タンパク質はリソソームに運ばれた後、アミノ酸と糖まで分解されます。

タンパク質の翻訳後修飾の1つに「アスパラギン残基(N)に付加される糖鎖(N型糖鎖)」があり、タンパク質の安定性、輸送、機能などの制御に重要な役割を果たしています。しかし、N型糖鎖の分解が正しく行われないと、さまざまな病気が引き起こされます。また、近年、糖鎖の分解がリソソーム以外の場所でも起こる「非リソソーム分解機構」の存在が明らかになってきましたが、その仕組みはまだよく分かっていません。N型糖鎖の前駆体は、ドリコールピロリン酸と呼ばれる脂質に結合した状態で存在しています。この「ドリコール結合型糖鎖」は、未知の酵素によって分解されて「リン酸化糖鎖」を生じます。しかし、リン酸化糖鎖の代謝機構には未解明な点が多く残されています。

理化学研究所を中心とする共同研究グループはまず、ドリコール結合型糖鎖の分解産物としてその存在が知られているリン酸化糖鎖を単離精製し、質量分析をすることで、ドリコール結合型糖鎖のリン酸基の数が1個であることを実験的に証明しました。また、リン酸化糖鎖が非リソソーム分解機構に関与する細胞質「エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)」のノックアウトマウス由来線維芽細胞において蓄積することを発見しました。さらに、比較的大きなリン酸化糖鎖(マンノースが4~7個)は著しく蓄積するのに対し、小さいリン酸化糖鎖(マンノースが0~3個)はほとんど蓄積しないことがわかりました(図参照)。ということは、ENGaseが比較的大きなリン酸化糖鎖の分解酵素として働いていると考えられます。この仮説を検証するため、生化学的にENGaseがリン酸化糖鎖を分解できるかどうかを調べました。その結果、ENGaseがリン酸化糖鎖を分解できること、およびその“基質特異性(酵素がある特定の器質を選んで反応する性質)”がENGase欠損細胞で蓄積するリン酸化糖鎖の構造と一致することが分かりました(図参照)。

以上の結果から、リソソーム以外(細胞質)でENGaseが、リン酸化糖鎖の代謝(分解)に関わっていることがわかりました。本研究によって、糖鎖分解の分子機構の全容解明に一歩前進したと言えます。

理化学研究所
グローバル研究クラスタ 理研-マックスプランク連携研究センター システム糖鎖生物学研究グループ 糖鎖代謝学研究チーム
チームリーダー 鈴木 匡 (すずき ただし)
特別研究員(研究当時) 原田 陽一郎 (はらだ よういちろう)
(現 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科システム血栓制御学講座 特任准教授)