広報活動

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2016年3月15日

理化学研究所

不安定な共役イミンが起こす多様な環化反応を発見

-光学活性物質合成や生体内機能発現機構の解明に大きな手がかり-

生体内で6員環化合物や8員環化合物が生成する可能性

有機化合物には無数といえるほどの種類がありますが、安定に存在するものと、不安定ですぐに他の化合物に変化してしまうものがあります。不安定なもの1つに、「N-アルキル共役イミン」があります。N-アルキル共役イミンは、窒素原子にアルキル基を持つ共役イミンです。生体内に存在する「共役アルデヒド(レチナールや脂質代謝物など)」と「一級アルキルアミン(リジンやエタノールアミンなど)」との反応によって、速やかに生成されます(図参照)。生体内では、さまざまな生命活動に携わっており、重要な化合物です。しかし、N-アルキル共役イミンは、すぐに重合したり加水分解を受けたりします。そのため、その化学的な特性については、これまで詳しく調べられておらず、有機合成の反応基質としてもほとんど利用されてきませんでした。

今回、理化学研究所の研究チームは、N-アルキル共役イミンに、生体内でも発生し、シックハウス症候群の原因物質でも有名な「ホルムアルデヒド」を共存させると、不安定なN-アルキル共役イミンが、その置換基の種類によって6員環化合物や8員環化合物(6個、あるいは8個の原子が環状に結合した化合物)に100%で変換することを見出しました。それは、[4+2]型反応(4原子と2原子が結合する過程)や[4+2+2]型反応(4原子と2原子と2原子が結合する過程)を経て進行します。しかも、N-アルキル共役イミンの置換基の種類によって、“立体選択的”に完全に制御して作り分けられていました(図参照)。

さらに、これらの化合物に数工程の反応を行うことにより、これまで合成することが難しかった40種類以上の光学活性な「ジアミン誘導体」の合成に成功しました。光学活性なジアミン誘導体は、金属触媒の配位子や生理活性物質の合成、生体内アミンの挙動を調べるための標識分子の原料として大変重要な化合物です。一方、ホルムアルデヒドは細胞内でも産生されます。そのため、N-アルキル共役イミンが起こす多様な環化反応は、生体内でも進行しており、さまざま機能調節に関わっている可能性があります。

今後、“見過ごされていた”N-アルキル共役イミンを用いた新しい化学反応の発展や、N-アルキル共役イミンが携わる生命調節機構、疾患発症の究明に貢献すると期待できます。

理化学研究所
准主任研究員研究室 田中生体機能合成化学研究室
准主任研究員 田中 克典 (たなか かつのり)
特別研究員 アンバラ・ラクマット・プラディプタ (Ambara Rachmat Pradipta)