広報活動

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2016年3月15日

理化学研究所

有機ケイ素化合物の新しい合成法を開発

-単純な有機ホウ素触媒で環境にやさしく効率的に-

有機ホウ素化合物触媒によるアニリン誘導体のケイ素化反応の図

有機ホウ素化合物触媒によるアニリン誘導体のケイ素化反応

「芳香族ケイ素化合物」は、有機エレクトロニクスや医薬品、機能性材料合成などの分野で広く用いられている化合物です。これらの化合物を合成するには、ヒドロシラン(ケイ素原子上に水素原子を有する化合物群)によるベンゼン環上の炭素-水素結合(C-H結合)にケイ素を付ける、直接ケイ素化反応が最も効率的とされ多用されています。しかし、この方法には金属触媒が必要であり、生成物に金属が残る場合があります。エレクトロニクスなどの機能性材料や医薬品合成の分野では、残留金属の影響や金属除去にかかるコストが問題になっています。さらに反応時に発生する水素ガスの受容体を、水素ガスと同量以上使う必要があります。このため、金属触媒を使わない芳香族ケイ素化合物の効率的な合成方法手法の開発が求められています。最近、有機ホウ素化合物が、水素やヒドロシランを活性化できる触媒として注目されています。しかし、有機ホウ素化合物は、分子内での脱水素ケイ素化反応に触媒として機能するという報告はあるものの、分子間でのC-H結合のケイ素化反応の成功例はありませんでした。

理研の研究チームはこれまで、金属触媒を用いた芳香族化合物のケイ素化反応やアルキル化反応の開発に有機ホウ素化合物を助触媒として使用していました。その過程で、アニリン類(ベンゼン環にアミノ基-NR2が結合した化合物)のケイ素化反応を試みたところ、金属触媒を使わなくても、少量の有機ホウ素化合物だけで反応が進むことを発見しました。さらに、市販の「トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン」だけを触媒として、アニリン類とヒドロシランを加熱するだけで、さまざまな有機ケイ素ユニットを導入したアニリン誘導体を効率的に合成できることが分かりました。この反応の反応物の適用範囲は広く、金属触媒としては脱ハロゲン化という副反応が起きやすく使用できなかった有機塩化ヒドロシランも利用できることが分かりました。さらに、反応で発生する水素ガスを除去するための水素受容体も必要ないことも明らかになりました。

金属を使用しない芳香族化合物のC-H結合のケイ素化反応は、水素受容体を必要とせず、市販の有機ホウ素化合物を触媒に使える簡便な方法です。さまざまな官能基を持つ有機ケイ素アニリン誘導体や、従来の金属触媒では合成が難しかった有機ケイ素化合物の合成にも利用できます。今後、環境にやさしい省資源型の有機ケイ素化合物の合成方法として、工業的な応用が期待できます。

理化学研究所
主任研究員研究室 侯有機金属化学研究室
主任研究員 侯 召民 (コウ・ショウミン)
(環境資源科学研究センター先進機能触媒研究グループ グループディレクター)
特別研究員 馬 元鸿 (マ・ユアンホン)
特別研究員 王 保力 (ワン・バオリ)
研究員 張 亮 (チャン・リャン)