広報活動

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2016年4月12日

理化学研究所
国立がん研究センター
東京大学
広島大学

肝臓がん300例の全ゲノムを解読

-ゲノム構造異常や非コード領域の変異を多数同定-

国立がんセンターの2013年の統計によると、肝臓がんは、日本における部位別がん死亡者数で、男性では3位、女性では6位です。年間約4万人が肝臓がんと診断され、3万人以上が亡くなっています。世界保健機関(WHO)の2012年の統計では、特に日本を含むアジアとアフリカで発症頻度が高く、世界全体の部位別がん死亡率では第2位となっています。

主な原因は肝炎ウイルスの持続感染です。B型(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の感染に伴う慢性肝炎から、肝硬変を経て、高い確率で肝臓がんを発症します。一般的に、がんはゲノム変異が蓄積することによって発症し、進行する“ゲノムの病気”であり、世界中でがんの網羅的解析やそのゲノム情報に基づく薬の開発、個別化医療が精力的に行われています。2008年、がんのゲノム変異の全容解明とカタログ化を目指し、世界最大規模のがんゲノム国際共同体である「国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC)」が発足しました。理研の研究者を中心とする共同研究グループもICGCに参加し、主に肝炎ウイルス関連の肝臓がんのゲノム解析を担当し、研究を進めてきました。

今回、共同研究グループは、日本人300例の肝臓がんの腫瘍と正常DNAと全ゲノムの塩基配列情報を次世代シーケンサーと東京大学ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピュータ「SIROKANE」で解読し、がん細胞のゲノム変異を網羅的に解析しました。データ総量は、約70兆個もの塩基配列情報に上りました。その結果、ゲノム異常は1つの腫瘍あたり平均で約10,000カ所でした。既知のがん関連遺伝子の染色体構造異常に加えて、新規のがん遺伝子の染色体構造異常を多数検出しました。染色体構造異常とは、1塩基の配列が変化するポイント変異とは異なり、数百~数百万塩基の大きな配列が変化する変異のことです。その他、HBVとDNAゲノムを持つアデノ随伴ウイルスの肝臓がんゲノムへの組み込み、遺伝子発現に影響を及ぼす可能性のある非コード領域や非コードRNAの変異も多数検出しました(図)。これらは、肝臓がんの発症や進行に深く関与すると考えられます。また、これらゲノム情報によって肝臓がんは6つに大きく分類され、肝臓がん予後の生存率はこれらの分類によって異なることが分かりました。

本成果は今後、がんのゲノム配列情報に基づいた肝臓がんの治療の個別化や新しい治療法、予防法への発展へつながる可能性があります。

肝臓がんの非コード領域のゲノム変異

肝臓がんの非コード領域のゲノム変異

理化学研究所
統合生命医科学研究センター ゲノムシーケンス解析研究チーム
チームリーダー 中川 英刀 (なかがわ ひでわき)