広報活動

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2016年5月27日

理化学研究所
東京大学

高温超伝導体の2つの顔

-磁場によって明らかになった超伝導と電荷秩序の競合-

磁場なし、磁場11T、磁場による変化、の図

図 電荷秩序に伴う電子の模様の磁場変化

「超伝導」とは、金属の電気抵抗が完全になくなる現象です。エネルギー損失のない送電ケーブルなどへの応用が考えられますが、絶対零度(-273.15℃)に近い温度でしか発現できないことが大きな問題でした。しかし、1986年に発見された「銅酸化物超伝導体」の中には、約-140℃まで超伝導状態を保つことができるものがあり、高温超伝導体と呼ばれ、応用範囲が広がると期待されています。さらに高い温度で超伝導を示す物質を見つけるには、超伝導が発現するメカニズムを理解することが重要ですが、それはいまだに明らかになっていません。

一般に超伝導が発現するには、固体内の電子間に引力が働き、2つの電子が「対」を作る必要があります。銅酸化物超伝導体の中の電子は対になったり、特徴的な空間構造を持つ「電荷秩序」を示したりします。しかし、超伝導と電荷秩序の関係は分かっていませんでした。今回、理研の科学者を中心とする共同研究チームは、超伝導を抑制し、その際に電荷秩序がどのような影響を受けるのかを調べることで、両者の関係を調べました。

まず、銅酸化物超伝導体「Bi2Sr2CaCu2O8+δ」(Bi:ビスマス、Sr:ストロンチウム、Ca:カルシウム、Cu:銅、O:酸素)に強い磁場を加えることにより、「渦糸(うずいと)」と呼ばれる局所的に超伝導が抑制された領域を導入しました。そして、渦糸での電子状態の空間構造を、走査型トンネル顕微鏡法を用いて直接観察することに成功しました。渦糸内部では、超伝導状態が壊れたときにできる電子の波が干渉してできる模様と、電荷秩序に起因する電子の模様が、同じ場所で異なるエネルギーに現れていました。

次に、電荷秩序が最も著しく現れるエネルギー領域での電子の分布を、磁場を加える前と磁場中の2つの条件で観察し比較しました。その結果、磁場中の渦糸の近くで、電荷秩序に伴う模様のコントラストが増大することが分かりました(図参照)。これは、「超伝導の抑制が電荷秩序を増強している」ことを意味し、両者が競合関係にあることを示しています。

この結果は、銅酸化物超伝導体の電子状態の全体像の理解、さらには超伝導発現メカニズムの解明へ向けた重要な知見になります。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 強相関物理部門 創発物性計測研究チーム
特別研究員 町田 理 (まちだ ただし)
チームリーダー 花栗 哲郎 (はなぐり てつお)