広報活動

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2016年5月31日

理化学研究所

新規タンパク質定量法「MS-QBiC」による体内時刻の測定

-質量分析装置を利用した新しいタンパク質定量法の開発-

定量解析を行ったマウスの体内時計タンパク質の図

定量解析を行ったマウスの体内時計タンパク質

細胞内では、多様な生体システムがさまざまなタンパク質によって形成され、生体機能をつかさどっています。その1つに「体内時計」があります。体内時計はホルモンの分泌、睡眠、代謝など、24時間周期で起こる生理機能に影響を及ぼし、バクテリアからヒトまで数多くの生物種に存在しています。

このような生体システムにおけるタンパク質ネットワークの状態は、時間経過とともに刻々と変化します。そのため、タンパク質の量的・動的な情報を得ることができれば、生体システムの機能や役割の理解へとつながります。しかし、細胞中には数千~数万種類のタンパク質が混在するため、調べたいタンパク質の相対量は極めて少なくなることが多く、正確な定量が難しい場合が多々あります。この問題を解決し、高感度なタンパク質定量を行う方法として、近年、質量分析装置(MS)を利用した手法が発展しています。

今回、理研の研究チームは、MSを利用した新しいタンパク質定量法「MS-QBiC」を開発しました。一般的にMSを用いたタンパク質定量では、安定同位体で標識した参照サンプルを利用します。MS-QBiCは、参照サンプルを安価、かつ即座に合成できるため、多種類のタンパク質の定量解析を効率良く行うことができるという利点があります。

研究チームは、MS-QBiCをマウス肝臓における体内時計に関わるタンパク質(体内時計タンパク質)の時系列変化の測定に応用しました。すると、16種類の体内時計タンパク質の定量解析に成功し(図参照)、そのうちの14種類は24時間周期で増減するという結果が得られました。体内時刻の測定法に「分子時刻表法」があります。これは24時間周期で量が増減する生体内物質量を指標としたもので、“リンネの花時計”にヒントを得て構築されました。研究チームは、定量結果を分子時刻表法へ応用することによって、特定の時刻における体内時計タンパク質の定量により、マウスの体内時刻を測定できることを明らかにしました。

MS-QBiCは体内時計の解析に留まらず、生体内のさまざまなタンパク質ネットワークの定量的な理解へと役立つと期待できます。

理化学研究所
生命システム研究センター 細胞デザインコア 合成生物学研究グループ
グループディレクター 上田 泰己 (うえだ ひろき)
テクニカルスタッフⅠ 鳴海 良平 (なるみ りょうへい)

生命システム研究センター 細胞デザインコア 合成生物学研究グループ 無細胞タンパク質合成研究ユニット
ユニットリーダー 清水 義宏 (しみず よしひろ)