広報活動

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2016年5月31日

理化学研究所

シビレエイ発電機

-強電気魚の電気器官を利用したATP系発電システムの開発-

電気器官直列ユニットを用いた発電デバイス。直列デバイスの原理図と実際のデバイス写真。

電気器官直列ユニットを用いた発電デバイス

進化の過程で、電気を発生する能力を獲得した魚たちがいます。なかでも、ウマのような大きな動物を感電させるデンキウナギは有名です。その他、デンキナマズやシビレエイもヒトを感電させることができる強い電気を発生します。これらの魚類は強電気魚と呼ばれます。強電気魚は、体内で変換効率が100%に近い効率的な発電を行っています。これは、ATP(アデノシン三リン酸)をイオン輸送エネルギーに変換する膜タンパク質(イオンポンプ、イオンチャネル)が高度に配列・集積化された「電気器官」とその制御系である「神経系」を持っているからです。

近年、生物機能に着目した“バイオ燃料電池”が開発されていますが、従来の発電法に比べて出力性能が劣っています。そこで、理研の研究者を中心とする共同研究グループは、強電気魚の発電法を人工的に再現・制御できれば画期的な方法になると考え、シビレエイを用いて実験を進めました。

最初に、共同研究グループはシビレエイ生体の頭部を継続的に圧迫する物理的刺激による電気応答を確認しました。すると、0.01秒以下のパルス電流(ピーク電圧19V、電流8A)が測定されました。この電流を利用して、LEDの点灯やコンデンサへの蓄電ができました。次に、シビレエイ個体から摘出した電気器官に神経伝達物質のアセチルコリン溶液をシリンジ針で注入する化学的刺激では、ピーク電圧91mV、ピーク電流0.25mA、1分以上の継続電流が測定されました。シリンジ針数を増やすことでピーク電圧1.5V、ピーク電流0.64mAを達成しました。また、繰り返し発電が可能であること、最大1日程度発電機能を保持できることが分かりました。

最後に、シビレエイの神経系にあたるデバイス・流体制御技術を創出しました(図参照)。すなわち、3cm角にカットした電気器官にアセチルコリン溶液の入ったシリンジを接続、電極をつないでデバイス化しました。それらのデバイスについて、発生電力の安定化、直列つなぎによる電圧増強、並列つなぎによる電流増強を調べました。その結果、16個のデバイスを直列につなぐことでピーク電圧1.5V、ピーク電流0.25mAを達成し、電力はコンデンサへ蓄電され、電池のように利用できることを実証しました。

本研究は、ATPエネルギーのみで実現できる高効率発電機に向けた第一歩と位置付けられます。

理化学研究所
生命システム研究センター 細胞デザインコア 合成生物学研究グループ 集積バイオデバイス研究ユニット
ユニットリーダー 田中 陽 (たなか よう)