広報活動

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2016年6月27日

理化学研究所

免疫を活性化させるミクロシナプス構造を発見

-外敵を検知したT細胞のミクロの接着力が免疫応答を増強-

免疫系は、ウイルスや花粉などの異物(抗原)の体内侵入を感知して、体を守る役割を担っています。抗原はまず、免疫細胞の一種の樹状細胞などに取り込まれた後、T細胞へとその情報が伝えられます。T細胞は抗原を感知すると活性化して、増殖し、異物を排除します。この情報の受け渡しの際、樹状細胞とT細胞は接着し、その接着面には、お互いの細胞表面にある分子や重要なシグナル分子が同心円状に配置された「免疫シナプス」が作られます。免疫シナプスの中心には抗原を認識するT細胞受容体(TCR)が集まり、その周りを接着分子がリング状に取り巻く構造であることが知られていたため、免疫シナプスの中心こそが、抗原を認識しT細胞が活性化される場であると考えられてきました。免疫シナプス(接着面)の直径は10マイクロメートルほど(μm、1μmは1,000分の1mm)です。

ところが2005年に、理研の研究チームは、TCRが抗原と結合するときに、TCRが100個ほど集まったクラスター(TCRミクロクラスター)を数多く作り、そこにシグナル分子を集めて、活性化を引き起こすユニットになっていることを発見しました。さらに今回は、それぞれのTCRミクロクラスターを接着分子がリング状に取り囲む構造を発見し、それが免疫シナプスの構造と似ているため「ミクロシナプス」と名付けました。1個のミクロシナプスの直径は免疫シナプスの10分の1くらいで、1μmほどです。

T細胞表面のTCRが抗原を結合すると、TCRミクロクラスターが形成されます。TCRミクロクラスターは、接着分子(インテグリン)や接着斑構成分子(paxillin、Pyk2)にサポートされてシグナル分子クラスターを維持し、T細胞を活性化するシグナルを送るミクロシナプスが形成されます。抗原結合後、ミクロシナプスは2分程でなくなり、TCRクラスターは5分以内に中央に集まり、免疫シナプス構造になります(図参照)。

ミクロシナプスの接着分子リングはT細胞の活性化初期の接着力を強めて、TCRの感受性とT細胞の活性化を強める働きをすることが分かりました。今後、接着分子リングを標的とした薬剤を開発することで、T細胞の感受性と活性化の強さを調節できる可能性があります。

ミクロシナプスによるT細胞の感度と活性化の増強の図

ミクロシナプスによるT細胞の感度と活性化の増強

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 免疫シグナル研究グループ
グループディレクター 齊藤 隆 (さいとう たかし)
上級研究員 多根(橋本) 彰子 (たね(はしもと) あきこ)