広報活動

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2016年7月7日

理化学研究所

寄生植物の侵入器官発生メカニズムの一端を解明

-オーキシンの局所的な生合成が重要なステップ-

YUC3遺伝子を介した吸器発生メカニズムの図

YUC3遺伝子を介した吸器発生メカニズム

アジアやアフリカに、ハマウツボ科に属するストライガという寄生植物が生息しています。ピンク色の美しい花を咲かせますが、“魔女の草”とも呼ばれるこの植物は、イネ科のトウモロコシやソルガム(コーリャン)などの穀物の根に寄生し、収穫量を大幅に減少させます。除草剤は宿主の穀物も枯らしてしまうため、役に立ちません。現在、アフリカを中心に年間10億ドル(約1000億円)以上の農業被害があり、1億人の生活に影響を及ぼしているといわれています。

ハマウツボ科の寄生植物は、根に「吸器」と呼ばれる侵入器官を発達させ、宿主植物の根に侵入して水分や栄養を奪います。吸器の発生は寄生への最初のステップですが、吸器の発生がどのように制御されているのかは明らかになっていませんでした。理研の科学者を中心とする国際共同研究グループは、吸器の発生メカニズムを解明するために、ハマウツボ科に属するコシオガマという、日本に自生して農業被害が問題になっていない寄生植物をモデル植物として確立し解析を進めました。

まず、コシオガマの吸器発生初期の遺伝子発現を、トランスクリプトーム解析などにより網羅的に解析したところ、多数の「オーキシン」の関連遺伝子の発現が上昇していることを突き止めました。オーキシンは植物ホルモンの一種で植物の器官発生において重要な役割を果たしていることが知られています。そこで、オーキシン生合成経路で働く酵素YUCCAをコードする「YUC3遺伝子」に着目し解析を進めました。その結果、コシオガマのYUC3を介したオーキシンの局所的な生合成が、吸器発生初期の重要なステップであることが分かりました。

すなわち、宿主植物との相互作用から吸器誘導物質を感知した寄生植物は、表皮でYUC3の発現を上昇させ、局所的なオーキシンの生合成を開始します。続いて、表皮付近で新たに確立されたオーキシン応答の極大点を頂端とし、吸器は宿主植物の方向へと向かって発達を始めます(図参照)。

今後、さらに吸器の発生メカニズムの解明が進めば、寄生植物による農業被害防止への応用が期待できます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループ
特別研究員(研究当時) ジュリアニ・K・イシダ(Juliane K. Ishida)
(現 サンパウロ大学 研究員)
研修生 若竹 崇雅 (わかたけ たかのり)
(東京大学大学院生)
上級研究員(研究当時) 吉田 聡子 (よしだ さとこ)
(現 奈良先端科学技術大学院大学 特任准教授)
グループディレクター 白須 賢 (しらす けん)