広報活動

Print

2016年7月15日

理化学研究所

躍動する光合成反応を可視化

-超解像イメージングで生きた細胞の光エネルギー伝達を観察-

SCLIMを用いた葉緑体の二色同時・三次元高速タイムラプスイメージング図

図 SCLIMを用いた葉緑体の二色同時・三次元高速タイムラプスイメージング

各画像は三次元構築した葉緑体内に存在するグラナ構造を示す。中段は、集光アンテナタンパク質を示す青色の擬似カラーで示した蛍光で、下段の光化学系を示す赤色の擬似カラーで示した蛍光。上段をその2色の重ね合わせ。それぞれ20コマ、約1.5秒間隔の変化を表している。赤色に比べて、青色の方が速い動きをしていることが分かる。

植物の葉に多く存在する葉緑体では、光エネルギーを利用することによって、水が分解されて酸素が発生し、二酸化炭素が固定されてデンプンなどが蓄積されます。このような光合成反応は、自然環境の維持と物質生産の根幹を担う重要な役割を果たしています。光合成反応ではまず、葉緑体内のチラコイド膜上に存在する色素クロロフィルが光を吸収します。吸収した光エネルギーをクロロフィルと結合している「集光アンテナタンパク質」が、同じチラコイド膜上にある「光化学系(タンパク質)」へ運びます(光エネルギー伝達)。運ばれた光エネルギーを光化学系が消費して「電子伝達系」を駆動させ、化学エネルギー生産を行います。光エネルギー伝達のメカニズムは複雑で、さまざまな分子が連動し、光合成反応の効率を制御していると考えられています。

これまで、光エネルギー伝達を生きた細胞で観察した例はありませんでした。それは、葉緑体の大きさは10マイクロメートル(μm、1μmは1,000分の1mm)以下のため、タンパク質の働きの観察や、高速に伝達する光エネルギーの直接観測が極めて難しかったからです。

今回、理研の科学者を中心とする共同研究チームは、一度に複数の色を三次元的にかつ高速、超空間分解能で観察できる「共焦点顕微鏡システム(SCLIM)」を開発し、SCLIMを用いることで、ヒメツリガネゴケの葉緑体内部を生きたまま観察することに成功しました。その結果、光エネルギー伝達の変動を示す「クロロフィル蛍光」のダイナミクスを可視化できました(図参照)。クロロフィルは日光の赤および青紫の光を吸収し、緑の光は吸収しないために、植物は緑色をしています。吸収した光は光合成に利用されますが、残りはある一定の割合で蛍光としてクロロフィルから放出されます。これをクロロフィル蛍光といいます。光化学系の影響を含む蛍光は比較的動きの変動が少ないのに対して、集光アンテナタンパク質の影響を含む蛍光は1.5秒間隔の変化では追跡できないほど速い動きをすることが分かりました。

今後は、光エネルギーがどの経路でどれくらいの速度で伝達・制御されているかを明らかにする必要があります。今回のSCLIMによる解析はその一歩です。

理化学研究所
光量子工学研究領域 エクストリームフォトニクス研究グループ 生細胞超解像イメージング研究チーム
客員研究員 岩井 優和 (いわい まさかず)
チームリーダー 中野 明彦 (なかの あきひこ)