広報活動

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2016年7月22日

理化学研究所

糖鎖の高感度検出に成功

-バイオマーカー開発への応用が目前に-

代謝ラベル法によるフコース糖鎖の検出

代謝ラベル法によるフコース糖鎖の検出

糖鎖とは、文字通り糖(単糖)がいくつも鎖状、もしくは分岐状に連なった状態のもので、非常に構造が多様であるという特徴を持っています。糖鎖がタンパク質に結合したものを、糖タンパク質といいます。哺乳動物に存在する50%以上のタンパク質には、糖鎖が結合しています。体の中で糖鎖は、細胞間の情報伝達、ホルモンなどの生体分子の情報を細胞内へ伝えるアンテナとしての役割を果たしています。

一方で、糖鎖の構造と量の変化が、がん、糖尿病、アルツハイマー病などの原因の一つとなっていることが分かっています。単糖のフコースを構成成分の一つに含む「フコース糖鎖」は、免疫機能や肺の機能に重要で、その発現異常は肺がん、肝がん、膵臓がん、慢性閉塞性肺疾患などでみられます。すでに、フコース糖鎖の量の変化を指標にしたバイオマーカーが、がん診断マーカーとして臨床現場で使用されています。診断マーカーとして糖鎖を利用するには、指標とする糖鎖を特異的・高感度・簡便に検出することが重要です。ところが、従来の診断マーカーでは、特異性(特定の糖鎖を見分ける性質)や感度が十分ではありません。

今回、理研の科学者を中心とした国際共同研究チームは、近年発達してきた「代謝ラベル法」という糖鎖の検出法を利用し、フコース糖鎖を高感度に検出できる「7-アルキニルフコース」と呼ばれる新しい化合物を開発しました(図参照)。7-アルキニルフコースは、フコースに三重結合を持つアルキニル基が結合しており、フコースと類似した構造をしています。7-アルキニルフコースをマウス細胞に添加すると、フコースと同じようにフコース糖鎖に取り込まれ、簡単に検出することができました。ヒト細胞でも、従来法よりも毒性が低く、高い感度でフコース糖鎖を特異的に検出することができることが分かりました。

今後、特にがんなどの新しいバイオマーカーに応用できますし、がんのライブイメージングなどもできるようになることでしょう。

理化学研究所
グローバル研究クラスタ 理研-マックスプランク連携研究センター システム糖鎖生物学研究グループ 疾患糖鎖研究チーム
チームリーダー 谷口 直之 (たにぐち なおゆき)
研究員 木塚 康彦 (きづか やすひこ)