広報活動

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2016年7月25日

理化学研究所
東京大学
東京医科歯科大学

マイクロ波単一光子の高効率検出を実現

-マイクロ波光子を用いた量子通信、量子情報処理へ応用-

マイクロ波単一光子の検出効率

マイクロ波単一光子の検出効率

現在のコンピュータで用いられる情報の最小単位“ビット”は、0と1の二値のみをとるのに対して、量子力学的に振る舞う量子ビットは、0と1の“量子力学的重ね合わせ状態”もとることができます。次世代のコンピュータとしてその実現が期待される「量子コンピュータ」は、量子ビットの持つこの特性を利用することによって、n個の量子ビットで2n個の状態を同時に準備し、超並列計算を可能とします.そのため、量子コンピュータは従来のコンピュータが苦手としてきた超並列計算を必要とする問題に威力を発揮し、現在最速のスーパーコンピュータが解くのに数千年かかる問題に対しても、数十秒で答えを出すことが可能だといわれています。

量子ビットにはいくつかの種類がありますが、中でも超伝導回路によって構成される超伝導量子ビットは、量子コンピュータの最有力な最小構成要素として注目されています。超伝導量子ビットの制御や状態の読み出しには、超伝導量子ビットの励起エネルギーに近いマイクロ波(周波数:数GHz~数十GHz、GHzは10億Hz)が用いられます。そのため、マイクロ波の“量子”である「マイクロ波単一光子」の高効率な検出や生成といった基盤技術は、量子コンピュータの早期実現等には欠くことができません。しかし、マイクロ波光子は、量子暗号通信分野などで用いられる近赤外光子と比較して、エネルギースケールが4~5桁小さいため、その検出は困難でした。

今回、理研の科学者を中心とする国際共同研究チームは、超伝導量子ビットの一つである磁束型量子ビットとマイクロ波共振器がコンデンサを介してつながった実験系を作製し、磁束型量子ビットに適切な周波数と強度を持つ外部電磁波を照射して、人工的に「Λ(ラムダ)型原子」を実装しました。Λ型原子とはΛ型の遷移経路を持つ三準位原子のことで、通常、三準位のうち最も高い準位が励起準位、残りの二つが基底準位となります。Λ型原子に共鳴する光子が入射されると、Λ型原子の状態は一方の基底準位から励起準位を経て、もう一方の基底準位へ遷移します。

国際共同研究チームは、Λ型原子に共鳴する信号マイクロ波光子を入射することによって誘起される、Λ型原子の状態遷移を検出することで、目的のマイクロ波単一光子の検出に成功しました。その結果、Λ型原子の共鳴周波数である10.268GHz付近の信号マイクロ波光子に対して、高い光子検出効率を示しました(図左参照)。また、このときの最大検出効率は66±6%に達し、これは今のところ、世界で最も高い数値となっています(図右参照)。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 量子情報エレクトロニクス部門 超伝導量子エレクトロニクス研究チーム
研究員 猪股 邦宏 (いのまた くにひろ)
チームリーダー 中村 泰信 (なかむら やすのぶ)
(東京大学先端科学技術研究センター教授)