広報活動

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2016年7月26日

理化学研究所
東京大学
東北大学金属材料研究所
九州工業大学

トポロジカル絶縁体表面で高効率スピン流を生成

-省電力スピントロニクスデバイス応用に期待-

トポロジカル絶縁体/非磁性体/強磁性体の三層積層膜の素子

トポロジカル絶縁体/非磁性体/強磁性体の三層積層膜の素子

「スピントロニクス」とは、スピンという電子の磁石としての性質が生み出す新しい物理現象を解明し、電子技術への応用を目指す分野のことです。電子の流れが電流であるのに対し、スピンの流れを「スピン流」といいます。スピン流の最大の利点は、電流で生じる熱によるエネルギー損失がないことです。つまり、電子の電荷の代わりにスピン流を制御できれば、エネルギー的に効率よく情報を伝達できるわけです。

「電流-スピン流の相互交換」は、スピントロニクスデバイスの駆動原理として重要な現象の一つです。これまで、遷移金属を用いたスピンホール効果(加えた電流と直交方向にスピン流が生成されること)によるスピン流検証実験が行われてきました。しかしその変換効率は低く、新しい変換原理が求められていました。そこで、理研の科学者を中心とする共同研究グループは、近年発見された「トポロジカル絶縁体」に着目しました。トポロジカル絶縁体の内部は絶縁体ですが、表面では金属的性質を示します。表面の電子は電子の進行方向に依存してスピンの方向が決まるという特長を、電流-スピン流変換現象に利用しようと考えました。

共同研究グループは、トポロジカル絶縁体(Bi1-xSbx)2Te3(Bi:ビスマス、Sb:アンチモン、Te:テルル)/非磁性体(Cu:銅)/強磁性体Ni80Fe20(Ni:ニッケル、Fe:鉄)の三層積層膜構造のスピントロニクス素子を作製し(図参照)、トポロジカル絶縁体の表面における電流-スピン流変換現象について調べました。その結果、界面で高効率な変換現象が起きていることが分かりました。そして界面での変換現象は、従来の金属系でのスピンホール効果とは本質的に異なる現象であるため、比較基準を改め新しい評価基準を定めました。さらに、その変換係数符合が伝導キャリアのタイプ(電子型か正孔型か)に依存しないという、トポロジカル絶縁体特有の現象を検出することに成功しました。

今後、界面を利用した省電力スピントロニクスデバイスの研究がさらに発展するでしょう。

理化学研究所
創発物性科学研究センター 量子情報エレクトロニクス部門 量子ナノ磁性研究チーム
研究員 近藤 浩太 (こんどう こうた)
客員研究員 福間 康裕 (ふくま やすひろ)
(九州工業大学大学院情報工学研究院電子情報工学研究系 准教授)
チームリーダー 大谷 義近 (おおたに よしちか)
(東京大学物性研究所 教授)

創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関量子伝導研究チーム
基礎科学特別研究員 吉見 龍太郎 (よしみ りゅうたろう)

創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関物性研究グループ
グループディレクター 十倉 好紀 (とくら よしのり)
(東京大学大学院工学系研究科教授)

創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関界面研究グループ
グループディレクター 川﨑 雅司 (かわさき まさし)
(東京大学大学院工学系研究科教授)