広報活動

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2016年8月1日

理化学研究所
日本電子株式会社

タンパク質の二次構造を決定する新たな手法を開発

14N固体NMRでβシート配向の区別が可能に-

14N固体 MAS NMR法のシステム

図 14N固体 MAS NMR法のシステム

NMR装置(左)と、本測定で必須の技術となる高速の試料回転を実現する極細のNMR試料管。

ヒトの体の中には10万種類以上ものタンパク質が存在し、生命活動を支えています。タンパク質の形(立体構造)と働き(機能)を解明し、私たちが生きている仕組みや、病気になる原因を探るのが生命科学の大きな目標の一つです。タンパク質は複数のアミノ酸が一本の“ひも”のようにつながってできた長い分子で、このひもが複雑に折り畳まれることで、タンパク質全体の立体構造が決まります。タンパク質の立体構造は多様ですが、ひもが並んで平面を作っていたり、らせん状に巻いて筒状になったり、部分的に似たような構造があることが分かります。アミノ酸の並び方をタンパク質の「一次構造」と呼ぶのに対し、このような部分的な立体構造のパターンを「二次構造」と呼びます。タンパク質の立体構造や機能を理解する上で、タンパク質のどこにどのような二次構造があるかを知ることは重要な手掛かりとなります。

βシートは代表的な二次構造の一つで、その名の通りシート状の構造を作ります。βシートは多くのタンパク質において、正常な立体構造や機能の維持に必須です。しかし一方で、アルツハイマー型認知症やプリオン病など、タンパク質の異常な凝集が原因となる疾患にも関わることが知られています。これらの原因タンパク質に含まれるβシートの解析が試みられていますが、凝集体となったタンパク質の立体構造を解析するのは容易ではありません。現在用いられている唯一の方法が、核磁気共鳴(NMR)法の一種である固体マジックアングル試料回転NMR法(固体 MAS NMR法)です。しかしこの方法では、解析対象となるタンパク質を窒素の同位体15Nや炭素の同位体13Cなどで標識する必要があり、応用範囲が限られていました。

今回、理研の科学者を中心とする国際共同研究グループは、NMRでの観測が非常に難しかった窒素の同位体14Nを用いた固体 MAS NMR法を開発し、タンパク質に含まれるβシートの種類を区別することに成功しました。14Nは地球に存在する窒素原子の99%以上を占める同位体ですから、天然状態のタンパク質がそのままNMR解析できることを意味します。NMR法の適用範囲が広がることで、タンパク質の立体構造解析や創薬への応用が一段と加速すると期待できます。

理化学研究所
ライフサイエンス技術基盤研究センター 理研CLST-JEOL連携センター 固体NMR技術開発ユニット
ユニットリーダー 西山 裕介 (にしやま ゆうすけ)
研究員 Manoj Kumar Pandey (マノジ・クマール・パンディ)