広報活動

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2016年8月5日

理化学研究所
自然科学研究機構分子科学研究所

両極性動作する有機モット転移トランジスタを実現

-集積化が容易な次世代トランジスタ開発に前進-

有機モット転移トランジスタの模式図と光学顕微鏡写真

有機モット転移トランジスタの模式図と光学顕微鏡写真

トランジスタは半導体でできた電子部品の代表格であり、“信号を増幅すること”“回路のオン/オフを切り替えること”ができます。また、これまで、コンピュータの小型化に大きく貢献してきました。1940年代~1950年代、真空管で制御していた時代のコンピュータは部屋一つを覆い尽くすほど巨大なものでしたが、トランジスタの出現によってスマートフォンやウェアラブル端末のように、身に付けて持ち歩くことができるほど、超小型なコンピュータが実現しています。

一方、従来のトランジスタの小型化は、微細加工技術などの制約によって限界を迎えつつあります。そこで、次世代のトランジスタとして注目されているのが、モット絶縁体を利用する「モット転移トランジスタ」です。モット絶縁体とは、伝導電子を持つにも関わらず、それらが互いに反発し身動きがとれなくなり絶縁体になっている物質のことです。

モット転移トランジスタは、モット絶縁体の“電気を流す「電子液体」と、電気を流さない「電子固体」の間の相転移(電子相転移)”を利用してオン/オフを切り替えます。また、半導体を集積回路として利用するためには、p型(正孔型)半導体とn型(電子型)半導体を組み合わせる必要がありますが、モット転移トランジスタはp型としてもn型としても動作する(両極性動作する)トランジスタであるため、集積化に有利です。しかし、これまでのモット転移トランジスタは、両極性動作するために大きな電圧が必要であり、実際にはp型かn型の一方としてしか動作しませんでした。

そこで、理研の研究者を中心とした共同研究グループは、比較的小さな電圧でも電子相転移を起こすことができる有機物のモット絶縁体を用いて、モット転移トランジスタを作製し(図参照)、その両極性動作に成功しました。有機材料を用いているので、軽量かつ柔軟、集積化が容易なトランジスタが実現できます。さらに、この研究は、将来の新たな太陽電池の開発や、高温超伝導を含めた従来とは異なる条件による超伝導の機構解明につながると期待できます。

理化学研究所
主任研究員研究室 加藤分子物性研究室
研究員 川椙 義高 (かわすぎ よしたか)
主任研究員 加藤 礼三 (かとう れいぞう)

准主任研究員研究室 柚木計算物性物理研究室
基礎科学特別研究員 関 和弘 (せき かずひろ)
准主任研究員 柚木 清司 (ゆのき せいじ)