広報活動

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2016年9月1日

理化学研究所

生体親和性の高いバイオプラスチック

-土壌細菌から組織工学で有用な新しい材料を開発-

土壌細菌による新しいPHA(PHBVDH)の生産の図

土壌細菌による新しいPHA(PHBVDH)の生産

プラスチックは軽くて丈夫、容易にさまざまな形状に変えられるといった特長から、日常生活のあらゆる場面で使われています。しかし、プラスチックのほとんどは石油などの化石資源から作られています。化石資源は近い将来、枯渇の恐れがあり、また燃やすと、大気中の二酸化炭素を増加させるため、地球温暖化の大きな原因といわれています。

このような状況からプラスチックの代替材料として、最近注目を集めているのが「バイオプラスチック」です。バイオプラスチックとは、植物や動物などの生物に由来する再生可能な有機性資源(バイオマス)を主原料とするプラスチックのことです。従来のプラスチックとは異なり、微生物によって二酸化炭素と水に分解される「生分解性」を持ち、燃やしても大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない材料と考えられています。

バイオプラスチックの一種にポリヒドロキシアルカン酸(PHA)があります。PHAは生物が栄養不足時に備える炭素およびエネルギーの貯蔵物質です。細胞への毒性が低く生体親和性が高いことから、すでに再生医療などの組織工学の分野で、細胞の増殖や接着の足場となる材料として使用されています。しかし、より生体親和性に優れた足場材料には高い「親水性」が必要です。

今回、理研を中心とする共同研究チームは、1分子中に2個の水酸基を持つジヒドロキシブタン酸(DHBA)を用いて、より生体親和性の高いPHAの生産を試みました。土壌細菌R.eutrophaの遺伝子を改変し、炭素源としてグリコール酸を与えることにより、新しいバイオプラスチック「PHBVDB」の生産に成功しました。PHBVDBは、従来のバイオプラスチックよりも高い親水性と細胞接着性を示しました。細胞への毒性もほとんどありませんでした(図参照)。

今後、PHBVDBの親水性を調節することにより、細胞接着性や生分解性がさらに向上すると考えられます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター バイオマス工学研究部門 酵素研究チーム
チームリーダー 沼田 圭司 (ぬまた けいじ)
特別研究員 Chayatip Insomphum (チャヤティップ・インソムファン)
特別研究員 Jo-Ann Chuah (ジョアン・チュア)