広報活動

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2016年9月2日

理化学研究所

Sar1の生細胞内三次元局在を可視化

-積荷タンパク質輸送小胞の鍵分子の限局を観察-

Sar1-GFPとSec13-mRFPの三次元局在の高解像度画像

Sar1-GFPとSec13-mRFPの三次元局在の高解像度画像(格子の1辺は84nm)

生命の基本単位の細胞が生命活動を維持するには、多種多様なタンパク質がそれぞれ働くべき場所に運ばれ、機能することが必要です。ヒト、植物、酵母などの真核生物の細胞内には、多様な細胞小器官(膜構造)があります。その一つである「小胞体」では、細胞内で新たに作られるタンパク質の約1/3が合成されています。合成されたタンパク質は、「積荷タンパク質」として「ゴルジ体」へ運ばれますが、そのときの仕組みは真核生物で共通しています。

まず、積荷タンパク質は、小胞体のERESと呼ばれる場所に集まる「COPⅡ小胞」に積み込まれます。その後、ゴルジ体のシス槽がCOPⅡ小胞に接触し、COPⅡ小胞とシス槽がつなぎ留められます。すると、COPⅡを覆うタンパク質が壊れ、小胞とゴルジ体の膜融合が起きます。この一連の流れを「ハグアンドキスアクション」と呼び、その結果、積荷タンパク質は小胞体からゴルジ体シス槽へ運ばれることになります。

この一連の仕組みには、GTP加水分解酵素である「Sar1」が鍵分子としての重要な役割を果たしています。COPⅡ小胞の形成開始には活性化したSar1が必要である一方、Sar1が不活性化しないとCOPⅡ小胞のゴルジ体シス槽へのつなぎ留めと膜融合は達成されません。Sar1は小胞体膜に広く分布することが分かっていますが、これまでの光学顕微鏡での観察では解像度が低いため、ERESに集まったCOPⅡ小胞のどこにSar1が局在しているかは明らかになっていませんでした。

今回、理研の共同研究チームは、多色・超解像・高速で蛍光イメージングができる「高感度共焦点顕微鏡システムSCLIM」を用いて、生きた出芽酵母細胞内のCOPⅡ小胞のどこにSar1が局在しているかを三次元で詳しく観察しました。その結果、“Sar1は、COPⅡ小胞の膜の端の小胞体膜とつながっている領域に局在し、その領域以外のCOPⅡ小胞の膜には局在しない”こと、つまり限られた領域に「限局」することが分かりました(図参照)。また、Sar1の局在は、Sar1自身の活性化・不活性化のサイクルによってもたらされることも明らかになりました。

理化学研究所
光量子工学研究領域 エクストリームフォトニクス研究グループ 生細胞超解像イメージング研究チーム
専任研究員 黒川 量雄 (くろかわ かずお)
客員研究員 須田 恭之 (すだ やすゆき)
チームリーダー 中野 明彦 (なかの あきひこ)