広報活動

Print

2016年9月2日

理化学研究所

ゴルジ体槽成熟の分子機構を解明

-COPⅠ被覆タンパク質の機能が必須-

COPⅠ被覆タンパク質を分解した出芽酵母株における槽成熟の阻害の図

COPⅠ被覆タンパク質を分解した出芽酵母株における槽成熟の阻害

ヒトや酵母を含む真核生物の細胞内には、細胞小器官と呼ばれるさまざまな膜構造があります。そのなかで、「核」には遺伝情報を保持するDNAが存在し、「小胞体」では、細胞内で新たに作られるタンパク質の約1/3が合成されています。合成されたタンパク質は、「積荷タンパク質」として輸送小胞を介して「ゴルジ体」へ運ばれます。ゴルジ体では、運ばれてきた多種多様な積荷タンパク質に糖鎖を付ける糖鎖修飾を行い、その後、それぞれの目的地に運び出す役割があります。ゴルジ体は、多数の区画からできていて、シス槽、メディアル槽、トランス槽に分けられています。小胞体から積荷タンパク質を受け取る槽をシス槽、積荷タンパク質を仕分けて目的地に運び出す槽をトランス槽、その間の槽がメディアル槽です。ゴルジ体の形はさまざまな真核生物の細胞で大きく異なっています。動物細胞では各槽が積み重なった層板構造が集合した巨大なゴルジ体が核の近くに存在しています。植物細胞では小さな複数の層板のゴルジ体が細胞質中にあります。今回の研究で用いた出芽酵母は、各槽が細胞質にばらばらに存在しています。しかし、積荷タンパク質を受け取り、糖鎖で修飾し、目的地に運びだす仕組みは共通しています。

このゴルジ体の中をどのようにタンパク質が輸送されるのかは、長い間議論が続いていました。

2006年に理研の研究チームは、蛍光タンパク質で標識したゴルジ体各槽の四次元ライブセルイメージングを行い、ゴルジ体の各槽が徐々にその性質を変えていく様子を捉えることに成功しました。それにより、ゴルジ体内でのタンパク質の輸送は、各槽が時間とともにその性質を変えていく「槽成熟」によって行われていることを発見しました。しかし、この槽成熟の分子機構までは明らかにできませんでした。

そこで今回研究チームは、多色・超解像・高速で蛍光イメージングが可能な「高感度鏡焦点顕微鏡システムSCLIM」を用いた四次元ライブセルイメージングにより、輸送小胞COPⅠを包んでいる「COPⅠ被覆タンパク質」の機能を阻害した出芽酵母のゴルジ体の槽成熟を観察しました。その結果、COPⅠの機能がゴルジ体の槽成熟、およびダイナミクスに必須であることが明らかになりました(図参照)。

理化学研究所
光量子工学研究領域 エクストリームフォトニクス研究グループ 生細胞超解像イメージング研究チーム
研修生 石井 みどり (いしい みどり)
客員研究員 須田 恭之 (すだ やすゆき)
専任研究員 黒川 量雄 (くろかわ かずお)
チームリーダー 中野 明彦 (なかの あきひこ)