広報活動

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2016年9月17日

理化学研究所
慶應義塾大学

植物青色光受容タンパク質の形と光受容変化

-植物の青色光受容における分子機構の一端を解明-

フォトトロピン1最小機能単位のX線小角散乱プロファイルと予測された構造モデルの図

フォトトロピン1最小機能単位のX線小角散乱プロファイルと予測された構造モデル

1880年に英国のチャールズ・ダーウィンと息子のフランシスは、光の方向に植物の茎などが曲がる「光屈性」を発見しました。その後1997年に、タンパク質「フォトトロピン1」が青色光受容体として光屈性の初発反応を担っていることが明らかになりました。また、フォトトロピンは高等植物では、光屈性だけでなく、青色強度に応じた葉緑体の集合・逃避運動、気孔の開口、葉の広がりを制御していることも分かりました。さらに、これらの運動制御は、光合成の効率を個体レベルで最適化するために必要であることも分かりました。

フォトトロピン1は青色光で活性化されるリン酸化酵素です。主に細胞膜に存在し、青色光を受容すると、一部は細胞質基質に放出されます。約1,000個のアミノ酸と光受容のためのフラビンモノヌクレオチド(FMN)2個で構成され、LOV1、LOV2という二つの青色光受容ドメイン(領域)とリン酸化酵素ドメインが折り畳まれた形をしています。各LOVドメインには、FMNが1分子ずつ結合しています。LOV2が青色光を受容すると、その信号がリン酸化酵素ドメインに伝達され、他のタンパク質をリン酸化してさまざまな細胞運動を誘起します。しかし、これまで、どのようにしてフォトトロピン1が青色光受容信号という物理刺激をリン酸化という生体内信号に変換しているのかは明らかになっていませんでした。

今回、理研の研究チームは、青色光受容ドメイン(LOV2)とリン酸化酵素ドメインからなる機能最小単位の立体構造を、「SPring-8」の放射光を用いた「X線小角散乱法」によって調べました。その結果、青色光受容に伴って分子の形が変形すること、その変化を担うアミノ酸を同定することに成功しました(図参照)。ここでX線小角散乱法とは、散乱角が小さいX線を測定することにより、物質の構造情報を得る手法です。

研究チームはこれまでと今回の研究を通じて、LOV2ドメインとリン酸化酵素ドメインの間の連結部分に分子内構造変化伝達の鍵となる構造があることが確かになりました。今後は、分子の全体構造を“原子レベル”で明らかにする必要があります。

理化学研究所
放射光科学総合研究センター 利用システム開発研究部門 ビームライン基盤研究部 生命系放射光利用システム開発ユニット
客員研究員 岡島 公司 (おかじま こうじ)
(慶應義塾大学 理工学研究科 特任助教)
ユニットリーダー 山本 雅貴 (やまもと まさき)