広報活動

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2016年10月13日

理化学研究所

横滑りX線導波管

-理論物理の検証が拓いたX線制御の新技術-

概念図

横滑り効果によるX線制御の概念図

X線は医療や科学研究を支える重要な光の一つです。しかし、X線は波長が非常に短く物質を透過しやすい性質を持つため、例えばその向きを変えるという基本的な制御すら、いろいろな工夫が必要です。そのため、多くのX線実験がさまざまな制約の下で行われています。そこで、X線を制御する新しい手法を開発すれば、制約を緩和して実験の幅をさらに広げることが可能になります。

今回、理研の研究チームはまず、圧電素子(与えられた電圧に応じた圧力を発生させる素子)でシリコン薄膜単結晶の歪みを制御する装置を開発しました。次に、大型放射光施設「SPring-8」で単色・平行度の高いX線ビームを作り、歪みを制御した試料に照射しました。結晶の角度は「ブラッグの条件」付近になるように維持しました。ここで、ブラッグの条件とは、結晶に入射したX線の回折が強め合うために必要な入射角度条件のことです。入射したX線の軌跡と向きの変化を調べたところ、光が持つ波としての性質が結晶の歪みで強調され、X線の向きは変わらず、位置だけが大きくずれる「横滑り現象」を発見しました(図参照)。これは、先行する理研の研究員による理論研究の実証へとつながりました。

また、研究チームは、この現象を応用することで、結晶の歪みを最適化してX線ビームの軸を任意に横滑りできるX線導波管(X線の伝送に用いられる構造体)を開発しました。さらに、圧電素子を振動させて結晶の歪みを任意に変動させることで、出射するX線のオン・オフを電気的に切り替える“光スイッチ”としての動作にも成功しました。この技術により、光ファイバーのように結晶を通じてX線を伝送することが可能となり、将来的にX線実験全般における手法や戦略の拡充へのつながりが期待できます。

理化学研究所
放射光科学総合研究センター 利用システム開発研究部門 ビームライン基盤研究部 放射光イメージング利用システム開発ユニット
客員研究員 武井 大 (たけい だい)
(立教大学先端科学計測研究センター研究員)
ユニットリーダー 香村 芳樹