広報活動

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2016年10月24日

理化学研究所
千葉大学
高知大学
大阪大学

生薬「甘草」のゲノム解読に成功

-重要生薬の原料の安定供給と有用遺伝子の探索に貢献-

ウラル甘草の花の写真

図 ウラル甘草の花

「甘草(カンゾウ)」はマメ科の生薬です(図参照)。薬として利用されるのは根の部分で、太いゴボウのような形態をしています。現在日本では、200種を超える漢方薬が処方されていますが、その70%に甘草が配合されており最も汎用性が高い生薬といえます。特に「グリチルリチン」には抗炎症作用や痛み・咳を鎮める効果をはじめ、多くの薬効があります。また、砂糖の150倍以上の甘さがあるため、天然甘味料として多くの食品に使われています。グリチルリチンは非糖質系のため、カロリーが低く、メタボリック症候群の予防にも役立つと期待されています。

しかし現在、甘草をはじめ、漢方に用いる生薬の85%は中国からの輸入に頼っています。近年の中国の経済成長などに伴い、輸出制限や価格の高騰が続いており、供給不安が懸念されています。そこで甘草のゲノムを解読できれば、ゲノム情報に基づいた効率的な育種を進めたり、薬効成分に関わる有用遺伝子を効率よく探索できるようになります。

今回、理研を中心とした共同研究グループは、最もグリチルリチン含量が高く上質とされる「ウラル甘草(東北甘草)」の全ゲノムを、タイプの異なる高速シークエンサーを組み合わせることにより解読しました。そして、推定ゲノムサイズの94.5%に相当する3億7900万ベースの「ゲノム情報」を構築しました。そのゲノム情報について遺伝子予測を行った結果、34,445個のタンパク質をコードする遺伝子を見出しました。また、甘草のゲノム情報と解読済みのマメ科のウルタマゴヤシやヒヨコマメのゲノム情報と比較解析を行いました。すると、薬効成分の一つである「イソフラボノイド」の生合成に関わる3個の酵素遺伝子が、10万~20万ベースにわたって遺伝子クラスタ(集合体)を形成していることを発見しました。さらに、グリチルリチンを含む有用化合物群の生合成に関わる酵素遺伝子が含まれる遺伝子ファミリー(P450ファミリーとUGTファミリー)を網羅的に探索し、それらの遺伝子構造と遺伝子発現を明らかにしました。

本成果は、甘草の「分子育種」による国内栽培化、生産性の向上、生薬としての機能改変の他、薬効成分の生産に必要な有用遺伝子の探索に貢献すると期待できます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 統合メタボロミクス研究グループ
グループディレクター 斉藤 和季 (さいとう かずき)

環境資源科学研究センター バイオマス工学研究部門 セルロース生産研究チーム
チームリーダー 持田 恵一 (もちだ けいいち)