広報活動

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2017年2月14日

理化学研究所
大阪市立大学

炎症から脳神経を保護するグリア細胞

-中枢神経疾患の予防・治療法の開発に期待-

NG2グリア除去による海馬組織への影響の図

図 NG2グリア除去による海馬組織への影響

上段:海馬の中を拡大した写真。ガンシクロビルの投与によって、海馬の中のNG2グリア細胞(黄色矢印)が除去されていることが分かる。
下段:NG2グリアの除去によって、海馬(破線で囲んだ部分)がとても小さくなった。

風邪をひいたりけがをしたりすると、熱が出たり喉や傷のところが痛くなったり赤くはれたりします。これは、ウイルスや細菌の感染や、けがから体を守ろうとしている反応で「炎症」と呼ばれています。炎症は体の細胞が傷つくことで始まり、傷が治るのにつれて治まります。脳の中の細胞もウイルスに感染したり、ストレスを感じたりして細胞が傷つくことがあります。そうすると、脳の中で炎症が起こって、ウイルスやストレスから脳を守ろうとします。

体の中には炎症を起こす細胞と炎症を抑える細胞がいます。この2種類の細胞が上手に炎症を調節することで体を守っていますが、うまく炎症を調節できないと守るはずの細胞を傷つけてしまうことがあります。年を取ると上手に炎症を調節することができなくなるので、脳の中で炎症が起きやすくなります。今まで、脳の中で炎症を起こす細胞のことはよく研究されていましたが、脳の中で炎症を抑える細胞のことはほとんど分かっていませんでした。今回、理研の研究チームは、年を取るにつれて機能が低下するNG2グリアという細胞に注目しました。細胞にはそれぞれ特別な仕事がありますが、NG2グリア細胞の仕事の詳細はよく分かっていませんでした。そこで、脳の中ではNG2グリア細胞が炎症を抑えているのではないかと仮説を立てて、NG2グリア細胞がいなくなったら脳はどうなるのかを調べることにしました。

NG2グリア細胞の仕事を調べるために、ネズミの脳の中でNG2グリア細胞だけを薬で除去しました。すると、脳の中で炎症が起こり、神経細胞がどんどん死んでいきました。そして、記憶に関わる海馬という組織がとても小さくなり、まるで年を取ったときの脳のようになりました(図参照)。つまり、NG2グリア細胞の仕事は、炎症を抑えて、神経細胞を守ることと考えられます。NG2 グリア細胞の機能が低下すると、炎症を上手に調節できなくなるのです。

最近の研究で、年を取るにつれて起こる脳の中の炎症が、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病のような、脳の中の神経細胞が弱ったり、死んでしまったりすることで起きる病気の原因になっているのではないかということが分かってきました。神経細胞を炎症から守るNG2グリア細胞の働きを上手にコントロールすることで、このような病気を予防したり、病気が進んでしまうのを食い止めたりすることが期待できます。

理化学研究所
ライフサイエンス技術基盤研究センター 生命機能動的イメージング部門 イメージング基盤・応用グループ 細胞機能評価研究チーム
チームリーダー 片岡 洋祐 (かたおか ようすけ)
(大阪市立大学大学院医学研究科システム神経科学 客員教授)
研修生 中野 真行 (なかの まさゆき)
(大阪市立大学大学院医学研究科 日本学術振興会 特別研究員-DC2)
上級研究員 田村 泰久 (たむら やすひさ)