広報活動

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2017年2月28日

理化学研究所

マイクロ閉空間での微生物の3次元運動制御に成功

-マイクロ流体素子内部へ自在に金属配線を施すレーザー加工技術を開発-

微生物の運動をガラス基板に対して垂直方向に配向させたエレクトロフルイディクスの図

図 微生物の運動をガラス基板に対して垂直方向に配向させたエレクトロフルイディクス

藻類に属する単細胞生物の「ミドリムシ」は、1本の「鞭毛」を体の周りで回転させることにより前進運動をするというユニークな動きをします。しかし、鞭毛の太さは数百ナノメートル(nm、1nmは10億分の1m)しかなく、体および鞭毛の長さは約0.03mmと短く、鞭毛は0.03~0.04秒で1回転するため、肉眼や通常のビデオカメラでは追跡できません。また、鞭毛が体に巻き付くように回転するためはっきり見えず、どうやって前進するための推進力を発生するのかは分かっていません。

このように、高速運動する微生物や生細胞の運動方向を自在に制御することは、それらの動態・機能を解明するために極めて重要です。観察を効率的に行うにはそれらを限られた閉空間に入れて、その動きを“3次元的に制御すること”が必要です。

そこで、理研の研究チームは、「マイクロ流体デバイス」内の電界方向を制御し、電気的にミドリムシの運動方向を制御する方法を考案しました。マイクロ流体デバイスとは、ガラスや半導体基板、ポリマーなどに微小流路や反応容器を作製し、生物研究や化学工学へ応用するためのマイクロデバイスのことです。研究チームは、①ガラスマイクロチップ内部に3次元マイクロ流体構造を構築し、②高強度で極短パルスのフェムト秒レーザー(1フェムト秒は1,000兆分の1秒)で流体構造内部の固体表面を選択的に削り取り、③流体構造内部に金属薄膜を堆積させることにより、金属配線を施す技術を開発しました。この技術を用いて、任意の箇所に電極を配置した「エレクトロフルイディスク」と呼ばれるバイオチップを作製し、バイオチップ内の電界分布を時間的・空間的に制御することで、ミドリムシの運動方向を3次元的に制御することに成功しました(図参照)。

これにより、微生物や生細胞の微小な部位や高速運動する部位を効率的かつ詳細に観察することができ、今後、それらの動態・機能の解明に貢献すると考えられます。また、電気化学的な手法を利用して、イオンや含有物質の定量・定性分析を高感度に行う電気バイオセンサーへの応用も期待できます。

理化学研究所
光量子工学研究領域 エクストリームフォトニクス研究グループ 理研-SIOM連携研究ユニット
ユニットリーダー 杉岡 幸次 (すぎおか こうじ)