広報活動

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2017年3月16日

理化学研究所
株式会社神戸製鋼所

鋼材の塗膜下腐食における水の動きを可視化

-中性子イメージングによる定量的な非破壊検査に成功-

普通鋼と合金鋼の試料の水の分布の時間変化の図

図 普通鋼と合金鋼の試料の水の分布の時間変化

この中性子透過像は日本金属学会第67回金属組織写真賞の優秀賞を受賞した。

土木・建築・機械などの材料とするため、板・棒・管などに加工した鋼鉄を「鋼材」と呼びます。 鋼材は安価で、強く、加工性に優れるため、建築物や橋梁といった社会インフラから自動車や航空機の材料などとして、各分野で大量に使用されています。鋼材最大の弱点は、雨や結露などの水の影響でさびやすい、すなわち腐食しやすいことです。腐食対策としては「塗装」が最も採用されており、日本の腐食対策費の約6割を占めています。しかし、塗装をしても時間が経つにつれて、塗膜のキズなどから水が塗膜下に浸入して腐食が進行します。そのため、定期的な塗り替えが必要で、維持管理コストが増大する原因となっています。そこで、腐食の進行を遅らせる塗料や耐食合金鋼などの開発が行われています。鋼材の腐食メカニズムを解明するため、これまでX線を利用した非破壊検査が行われてきました。しかしX線では鋼材への透過能が不十分で、かつ水に対する感度が低いため、十分な解析ができませんでした。そこで、水に対する感度が高い中性子を用いた非破壊検査が注目を集めています。

理研を中心とする共同研究チームは普及型の「理研小型中性子源システムRANS」を用いて、鋼材塗膜下の水の動きを定量的に評価する解析手法を開発しました。今回、この手法を「大強度陽子加速器施設J-PARC」での実験に適用しました。これは、小回りの利く小型中性子源で開発・テストした解析手法を大強度中性子源での高時間・高空間分解能イメージングに適用するという、中性子源の相補利用のモデルケースで、学術界だけでなく産業界からも注目されています。

共同研究チームはまず、簡易塗装された普通鋼と合金鋼に対して、それぞれJISが定める促進腐食試験により塗膜に人工的に欠陥を作りました。この条件は、東京の郊外地区で11年間自然にさらして腐食した状況に相当します。欠陥を起点にできた膨れを成長させたのち水を含ませ、自然乾燥するまでの数時間、塗膜下の水の動きをJ-PARCの高強度中性子による高時間・高空間分解能の中性子イメージングにより詳細に観察しました。その結果、普通鋼よりも合金鋼の方が欠陥からの水の浸入が少なく、乾燥も速いことが分かりました(図参照)。

今後、鋼材腐食に関する多くの定量的データを得ることで鋼材の腐食メカニズムが解明され、維持管理コストの低減につながると期待できます。

理化学研究所
光量子工学研究領域 光量子技術基盤開発グループ 中性子ビーム技術開発チーム
チームリーダー 大竹 淑恵 (おおたけ よしえ)
副チームリーダー 竹谷 篤 (たけたに あつし)
研究員 若林 泰生 (わかばやし やすお)

光量子工学研究領域
特別顧問 池田 裕二郎 (いけだ ゆうじろう)