広報活動

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2017年4月5日

理化学研究所
東京工業大学

炎症反応を制御する新たな分子MKRN2を発見

-過剰な炎症反応を防ぐ仕組みの一端を解明-

MKRN2およびPDLIM2による炎症反応制御機構の図

図 MKRN2およびPDLIM2による炎症反応制御機構

「炎症を起こしていますね」とお医者さんからいわれたことがある人は多いはず。炎症とは病原体に感染したとき、体の一部が赤くなったり、痛くなったり、腫れあがったりする状態のことです。これは炎症反応とも呼ばれ、体に侵入したウイルスや細菌などを排除しようと体が戦う一連の免疫反応です。ところが、炎症反応が何らかの原因で暴走する状態が続くと、例えば気管支喘息や花粉症などのアレルギー性疾患や、関節リウマチなどの自己免疫疾患を発症します。このことから、生体は免疫系を促進するだけでなく、逆に抑制するシステムも備えていて、炎症反応が過剰にならないように巧みに調節していると考えられています。

病原体を見つけ出す働きをする免疫細胞は、樹状の棘を持つ白血球の樹状細胞です。そして、炎症反応の開始に重要な役割を果たしているのが「NF-κB」という転写因子です。転写因子とは、特定のDNA配列に結合し、遺伝子発現を制御するタンパク質のことです。NF-κBは活性化すると細胞質から核内に移動し、炎症反応に関わる一連の遺伝子発現を促進することにより、炎症反応を誘導します。これまで理研の研究チームは、タンパク質「PDLIM2」がNF-κBにユビチキンという小さなタンパク質を付加し、NF-κBが分解されることで炎症反応が抑制される分子メカニズムを研究してきました。

今回、研究チームは酵母を用いた方法で、PDLIM2と結合するタンパク質を網羅的に探しました。その結果、「MKRN2」というタンパク質がPDLIM2と共同で、NF-κBにユビチキンを付加し、タンパク質分解酵素複合体プロテアソームによって分解・不活性化することで、炎症反応が収束に向かうことが分かりました(図参照)。

本成果は、アレルギー疾患や自己免疫疾患の治療法の開発に役立つと期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 炎症制御研究チーム
国際プログラム・アソシエイト(研究当時) シン・チャンヨン (Shin Chanyoung)
(東京工業大学生命理工学院博士課程、研究当時)
チームリーダー 田中 貴志 (たなか たかし)