広報活動

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2017年5月2日

理化学研究所

ゴルジ体形成過程の再現

-生体膜物理モデルによるゴルジ体再集合シミュレーション-

細胞内にはゴルジ体、小胞体、ミトコンドリアなど、さまざまな細胞小器官があります。ゴルジ体は主に、小胞体から運ばれてきた脂質膜(脂質分子からなる膜状構造)とタンパク質を、他の細胞小器官で機能するもの、細胞外に放出されるものなど、その目的地ごとに仕分けして出荷する“配送センター”のような役割を担っています。また、ゴルジ体自体も主に脂質膜からできており、平べったい袋状の槽(そう)が数枚積み重なった形をしています。このユニークな形がゴルジ体の機能と深く結び付いていると考えられています。

哺乳類細胞のゴルジ体は、細胞分裂のたびに小さな膜小胞(球形の袋状構造)に分解されてばらばらになり、細胞分裂後に娘細胞においてその膜小胞が集合して、再び槽が積み重なった形を生み出すという、劇的な変形過程(ゴルジ体再集合ダイナミクス)を繰り返しています。しかし、ゴルジ体はとても小さいため、その変形過程を光学顕微鏡などで生きたまま直接観察することが難しく、これまでゴルジ体の形成機構はほとんど分かっていませんでした。

今回、理研の研究チームはゴルジ体を構成する脂質膜の物理的性質に注目し、ゴルジ体の物理モデルを作成しました。そして、このモデルに基づいたシミュレーションをコンピュータ上で行うことにより、ゴルジ体再集合ダイナミクスを再現することに成功しました。この観察から、初期の少数の膜小胞が融合した段階で槽のもととなる平べったい構造が作られ、それを足場として全体の構造が自己組織化的に作られることを発見しました(図参照)。自己組織化とは、それぞれは単純な振る舞いしか示さないユニットが多数集まることにより、大きなスケールでは秩序化された構造や動態を生み出す現象を意味しています。

今回開発した物理モデルシミュレーションによる再現・可視化の手法は、ゴルジ体形成にとどまらず、観察が難しいさまざまな細胞小器官の形成メカニズムや機能を研究する上で強力な武器になると期待される画期的な成果です。

ゴルジ体再集合ダイナミクスのシミュレーション結果の図

図 ゴルジ体再集合ダイナミクスのシミュレーション結果

理化学研究所
主任研究員研究室 望月理論生物学研究室
研究員 立川 正志 (たちかわ まさし)
(理論科学連携研究推進グループ (iTHES) 連携研究員、数理創造プログラム (iTHEMS) 研究員)
主任研究員 望月 敦史 (もちづき あつし)
(理論科学連携研究推進グループ (iTHES) 階層縦断型理論生物学研究チーム チームリーダー、数理創造プログラム (iTHEMS) 副プログラムディレクター)