広報活動

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2017年5月16日

理化学研究所

腸管内の細菌取り込みの新たな仕組みを解明

-インターロイキン-22結合タンパク質の役割が明らかに-

IL-22結合タンパク質(IL-22BP)はパイエル板の樹状細胞で作られるの図

図 IL-22結合タンパク質(IL-22BP)はパイエル板の樹状細胞で作られる

病原性微生物(病原体)が腸管に感染すると、私たちの体はその場でいち早く病原体をやっつけるため、インターロイキン-22(IL-22)というシグナル分子を産生します。免疫細胞で作られたIL-22は腸管の上皮細胞に働きかけて、粘液や抗菌タンパク質を作る、上皮細胞の表面をフコシル化するといった方法で体を守ろうとします。一方でIL-22の働きを抑制する分子としてインターロイキン-22結合タンパク質(IL-22BP)が知られますが、その生体内における役割は十分に分かっていませんでした。

今回、理研を中心とする国際共同研究グループは、野生型マウスとIL-22BP欠損マウスの比較などを行い、IL-22BPの発現や働きについて調べました。その結果、IL-22BPは①パイエル板と呼ばれる免疫誘導組織内の樹状細胞で作られること(図参照)、②濾胞随伴上皮細胞層にあるIL-22のシグナルを阻害することが分かりました。IL-22が阻害されると、防御反応は妨げられますが、代わりに病原体が上皮細胞に点在するM細胞からパイエル板へと取り込まれ、腸管免疫応答が誘導されます。

すなわち、IL-22BPはIL-22の作用を妨げ、敢えて腸管から病原体を取り込みやすくすることで、腸管免疫応答へとスムーズに導く役割を果たしていることが明らかになりました。IL-22がその場の防御反応を促進するアクセルだとすると、IL-22BPはその働きを弱めるブレーキのような役目を担い、体はこのアクセルとブレーキを微妙に調節することで恒常性を維持しているといえます。本成果は今後、M細胞を標的とした粘膜ワクチンデリバリーシステムの開発につながるものと期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ
研究員 金谷 高史 (かなや たかし)
グループディレクター 大野 博司 (おおの ひろし)