広報活動

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2017年5月17日

理化学研究所
群馬大学

肥満細胞の新たな機能を発見

-寄生虫の新しい初期感染防御メカニズムを解明-

肥満細胞による2型自然免疫リンパ球(ILC2)の活性化と寄生虫排除機構の図

図 肥満細胞による2型自然免疫リンパ球(ILC2)の活性化と寄生虫排除機構

「肥満細胞」は哺乳類の粘膜下組織などに存在し、免疫反応などの生体防御に重要な役割を果たしています。肥満細胞といっても肥満とは関係ありません。19世紀に発見された当時、膨れた様子が肥満を想像させることからついた名前です。肥満細胞の特徴の一つに、中身の詰まった顆粒を多数有することが挙げられます。発見当時、この顆粒は外部から物質を取り込んだ様子を表していると考えられたため「食べ物を食べた細胞:Mastzellen」という名前がつけられ、肥満細胞の別名である「mast cell(マスト細胞)」の語源となりました。

私たちの体は、細菌やウイルスに対しては1型ヘルパーT細胞を主体とする「1型免疫応答」を誘導するのに対し、腸管寄生線虫と呼ばれる寄生虫に対しては、2型ヘルパーT細胞や2型自然リンパ球を主体とする「2型免疫応答」を誘導します。この2型免疫応答では肥満細胞が活躍するのですが、そのメカニズムや2型自然リンパ球との関連についてはよく分かっていませんでした。

今回、理研を中心とする共同研究グループは遺伝的に肥満細胞が多いマウスを作製し、寄生虫感染に対する肥満細胞の働きを調べました。その結果、次のことが分かりました(図参照)。①寄生虫がマウスの小腸に到達すると、腸管の上皮細胞を突き破ります。②その際、上皮細胞からアデノシン三リン酸(ATP)が放出され、そのATPが粘膜組織下の肥満細胞のATP受容体(P2X7)と結合して肥満細胞を活性化します。③活性化された肥満細胞は、インターロイン-33(IL-33)という特定の細胞に情報を伝えるタンパク質を分泌します。④IL-33は2型自然リンパ球を活性化し、こんどはインターロイキン-13(IL-13)が分泌されます。⑤IL-13は腸管上皮の杯(さかずき)細胞を刺激してムチンという粘液を分泌させ、寄生虫が体外に排出されます。

本研究で明らかになった“肥満細胞が2型自然リンパ球を活性化し誘導される2型免疫応答”は、実はアレルギーなどの難治性疾患の原因にもなっています。今後、肥満細胞に端を発する2型免疫応答の誘導を抑制することができれば、アレルギーなどの新たな予防・治療法の開発につながると期待できます。

理化学研究所
統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ
客員研究員 下川 周子 (しもかわ ちかこ)
(群馬大学 大学院医学系研究科 国際寄生虫病学分野 助教)
グループディレクター 大野 博司 (おおの ひろし)