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2017年5月19日

理化学研究所

ガンマ線を放出する非束縛状態の発見

-電磁相互作用が強い相互作用に拮抗する稀な現象-

画像:133Snと132Snのエネルギー準位図

図 133Snと132Snのエネルギー準位図

自然界には、強い相互作用、電磁相互作用、弱い相互作用、重力相互作用の四つの基本的な相互作用があります。ミクロな原子核の世界では、強い相互作用により陽子や中性子(核子)が結び付いています。原子核を徐々に励起していくと、核子同士が結び付くか・結び付かないかの限界に達します。この限界を超えると、原子核は核子同士が結び付かない「非束縛状態」と呼ばれるエネルギー状態になり、核子を放出して異なる原子核へと崩壊します。これは強い相互作用によるものです。

一方で、限界を超えない場合には通常、核子は放出されず、ガンマ線を放出して基底状態に移る「ガンマ崩壊」が起こります。これは電磁相互作用によるものです。この電磁相互作用の大きさは強い相互作用の1万分の1しかありません。そのため、非束縛状態にある原子核ではガンマ崩壊は起こらないと考えられていました。実際にこれまで、非束縛状態にある中性子過剰なスズ-133(133Sn、陽子数50、中性子数83)が中性子1個を放出して132Snの基底状態に移る様子が観測されていました。

今回、理研を中心とする国際共同研究グループは、理研の重イオン加速器施設のRIビームファクトリー(RIBF)の大強度ウラン(238U)ビームを用いた核分裂反応により134Snビームを取り出し、それを炭素標的に照射することで133Snを生成しました。生成された133Snから放出されたガンマ線のエネルギーを測定したところ、束縛状態と非束縛状態の限界である2.4MeVよりも大きい3.6MeVであることが分かりました。すなわち、この発見はこれまでの常識を覆し、133Snが非束縛状態であるにも関わらず、強い相互作用と拮抗してガンマ崩壊を起こした稀な現象であることを示しています(図参照)。

これまで、宇宙での重元素合成過程(r過程)の理論モデルには、中性子過剰な原子核の脱励起に関して中性子放出による崩壊過程だけが含まれていました。しかし本成果により、ガンマ崩壊も考慮する必要性が生まれました。今後もRIBFで非束縛状態の研究が進むことで、これまでの常識を覆す新しい成果の創出が期待できます。

理化学研究所
仁科加速器研究センター 櫻井RI物理研究室
研究員 ピーター・ドーネンバル (Pieter Doornenbal)
主任研究員 櫻井 博儀 (さくらい ひろよし)