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2017年5月23日

理化学研究所

木星オーロラの爆発的増光観測に成功

-「ひさき」「ハッブル」「ジュノー」の国際連携による成果-

オーロラ観測から推定される木星のエネルギー解放・輸送過程の概念図

図 オーロラ観測から推定される木星のエネルギー解放・輸送過程の概念図

地球や木星のオーロラを宇宙から眺めると、北と南の極域に浮かぶ二つの光の環(オーロラオーバル)となって見えます。ただし木星オーロラは、地球オーロラよりも100倍以上明るい激しい現象です。

木星オーロラは、衛星イオに由来する火山性ガス(荷電粒子の集団であるプラズマ)の一部が光速に近い速度まで加速され、磁場に沿って極域に振り込み、大気と衝突することで発光します。ガスが加速される際のエネルギー源は、木星の高速自転や磁場だと考えられていますが、そのエネルギーがどこからどのように極域まで運ばれ、ガスがどのようにして光速近くまで加速されるのかは不明でした。

今回、理研を中心とする国際共同研究グループは、日本の惑星分光観測衛星「ひさき」と米国のハッブル宇宙望遠鏡を用いて、木星オーロラが数時間で爆発的に増光する様子をとらえることに成功しました。さらに、米国の木星探査機ジュノーの観測データを組み合わせることにより、次の①~④ような、「木星のエネルギー解放・輸送機構の存在」を示しました(図参照)。①木星の遠方100木星半径(約710万km)以内には、二酸化硫黄などの火山性ガスと木星磁場のエネルギーが大量に蓄積されています。②その磁場エネルギーは、太陽から吹き付ける太陽風(プラズマ)によってガスに移動し(解放され)、高エネルギーのガスが生み出されます。③生じた高エネルギーガスは赤道域を木星に向かって運ばれますが、わずか数時間から20時間で、イオ周辺のガスが濃密な領域(6木星半径、約43万km)に到達します。④高エネルギーガスは木星磁場に沿って地磁気緯度60度以上の極域へと降下していき、オーロラを爆発的に増光させます。

今回示されたエネルギー輸送経路上には、イオの少し外側に氷で覆われた氷衛星と呼ばれるエウロパやガニメデがあります。氷衛星には地下に液体の海があり、その中には生命が存在する可能性があります。今後、高エネルギーガスが氷衛星に及ぼす影響を調査することで、地球とは異なる生命環境の理解につながると期待できます。

理化学研究所
仁科加速器研究センター 玉川高エネルギー宇宙物理研究室
基礎科学特別研究員 木村 智樹 (きむら ともき)