広報活動

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2017年5月24日

理化学研究所
東京大学

固体中の相対論的電子による新しい相転移現象を発見

-トポロジカル電子状態の理解と発展に道-

鉄や銅などの金属は、内部で電子が自由に動き回ることができるため電気をよく通します。これに対して遷移金属酸化物の多くは、内部で電子同士の相互作用が強く電子は互いに反発するため電気を通しません。このような物質は「強相関電子系」呼ばれ、電荷、スピン、軌道自由度が大きなエネルギースケールで作用し合っています。そのため、外部からの圧力や磁場など刺激によってさまざまな相が現れます。

なかでも、「パイロクロア型結晶構造」を持つイリジウム酸化物は、中身は絶縁体であるにも関わらず表面は金属であるトポロジカル絶縁体などでみられる、「トポロジカル電子相」の発現が理論的に予測されて以来、大きく注目されています。しかし、試料合成が難しいため実験例が少なく、予測された電子相が実在するかどうかはよく分かっていませんでした。

今回、理研を中心とする国際共同研究グループは、パイロクロア型結晶構造を持つ「ネオジウム・プラセオジウムイリジウム酸化物((Nd1-xPrx)2Ir2O7)」の高品質な単結晶を合成し、圧力・温度・磁場を細かく制御しながら電気抵抗率を測定しました。その結果、相転移温度が絶対零度(0K)になる量子臨界点の近傍において巨大な磁気抵抗効果(外部磁場によって電気抵抗が変化する現象)を観測しました(図参照)。さらに、電気抵抗率の変化に伴い、ホール伝導度が符号の変化を含めた異常な磁場依存性を示すことを明らかにしました。また、理論計算から観測された現象が新しいタイプのトポロジカル電子相の発現を示している可能性を見いだしました。

本成果は、固体中における磁性と電子状態に関する基礎的な理解を深めるとともに、トポロジカル電子相に関する新たな知見を与えると期待できます。

Nd2Ir2O7の抵抗率の温度依存性と相図

図 Nd2Ir2O7の抵抗率の温度依存性と相図

理化学研究所
創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関物性研究グループ
研修生(研究当時) 上田 健太郎 (うえだ けんたろう)
(現マックスプランク固体物性研究所 博士研究員)
研修生 金子 竜馬 (かねこ りょうま)
(東京大学大学院工学系研究科 大学院生)
客員研究員 藤岡 淳 (ふじおか じゅん)
(東京大学大学院工学系研究科 講師)
グループディレクター 十倉 好紀
(東京大学大学院工学系研究科 教授)

創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関理論研究グループ
グループディレクター 永長 直人 (ながおさ なおと)
(東京大学大学院工学系研究科 教授)