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2017年6月14日

理化学研究所

二つの形が共存している原子核の発見

-クリプトン-98原子核はミカン型とレモン型が共存-

98Krの励起状態の準位図

図 98Krの励起状態の準位図

原子核内の核子(陽子と中性子)同士は強い相互作用により結び付き、一つの塊となって、原子核を形作っています。原子核の形は、内部の「対称性」と「エネルギー」によって決まります。例えば、陽子数、中性子数が“魔法数”の場合は、球対称の状態が最もエネルギーが低くなり、原子核は球形となります。球形の原子核から核子の数を変化させていくと、原子核の形は楕円体に変形し、ミカン型やレモン型、洋ナシ型、バナナ型などが現れます。

また通常、原子核の形は一つですが、二つの形が混在することがあります。例えば、形Aの原子核の中性子数だけを増やすと別の形Bに変化する場合、その途中で形AとBが混在します。このような状態は「形状共存状態」と呼ばれ、原子核のみで起こる稀な量子現象です。形状共存は対称性の変化を観察する上で貴重な情報を与えるため、形状共存した原子核の発見は重要課題となっています。

今回、理研を中心とした共同研究グループは、クリプトン-98(98Kr、陽子数36、中性子数62)に着目し、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を用いて、98Kr原子核の励起準位を生成し、この励起準位から脱励起する際に放出するガンマ線のエネルギーを測定しました。その結果、第一励起準位(0.329MeV)、第二励起準位(0.827MeV)、中間の励起準位(0.545 MeV)の存在が明らかとなりました。中間の励起準位と基底状態とのエネルギー差はわずかなため、中間の励起準位には基底状態とは異なる形が混在している、すなわち形状共存状態であることを意味しています。理論計算で原子核の形を調べたところ、基底状態はミカン型で、中間の励起準位はレモン型であることが分かりました(図参照)。

今回の実験結果と理論計算との比較により、今後、ミカン型とレモン型のどちらが多いのか、どのように形が変化するのかを解明することで、他の核種領域での形状共存状態の研究が進むと期待できます。

理化学研究所
仁科加速器研究センター 櫻井RI物理研究室
研究員 ピーター・ドルネンバル (Pieter Doornenbal)
主任研究員 櫻井 博儀 (さくらい ひろよし)

仁科加速器研究センター 上坂スピン・アイソスピン研究室
客員研究員 アレクサンドレ・オベルテッリ (Alexandre Obertelli)
主任研究員 上坂 友洋 (うえさか ともひろ)