広報活動

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2017年6月27日

理化学研究所

熱しても冷やしてもできる超分子ポリマー

-材料開発における新たな設計指針-

私たちの身の回りにあふれているプラスティックなどの素材は、小分子(モノマー)が数珠のように共有結合という強い力で連結した高分子(ポリマー)が絡み合ってできています。これに対して30年ほど前、モノマー同士が水素結合などの弱い力で接着している「超分子ポリマー」が発明されました。超分子ポリマーのモノマー同士は物理的な力で引き離すことができ、その力を緩めれば自動的に再接着します。このような可逆的性質は、傷などのダメージを自身で修復する「自己修復材料」などへ応用できるため、新時代の材料として注目されています。

今回、理研の研究チームは、近年発見された“分散したポリマーを加熱すると凝集する現象”に着目し、「PORcu」というモノマーからなる1次元の超分子ポリマーを開発しましたPORcuには、真ん中にポルフィリンのπ共役コアがあり、その周りに二つのアミド基を持つ側鎖が4本結合した構造をしています。非極性溶媒中でPORcu同士は、共役コア間はπ-π相互作用、側鎖のアミド基間は水素結合によって接着しているため、110℃以上にしてもバラバラになりません。

ところが、この溶液にアルコールを加えると、アルコールの水酸基がPORcuのアミド基と水素結合を形成し、アミド基間の水素結合が阻害される結果、超分子ポリマーがバラバラになります。この溶液を加熱すると、アルコールがPORcuのアミド基から離れ、アミド基間の水素結合が再形成され、超分子ポリマーが形成されました。このプロセスは可逆で温度を下げると再度アルコールがPORcuと水素結合を形成し、ポリマーはまたバラバラになりました。このバラバラの状態からさらに温度を下げると、アルコールが逆ミセルという球状集合体を形成することに伴い、超分子ポリマーが再形成されることが分かりました。つまり、「ある温度でバラバラの超分子ポリマーが、その温度を中心に、加熱しても冷却しても重合が進行する超分子ポリマーを作製することに成功しました(図参照)」。

本材料は加熱により重合が進行するため、温度上昇に伴い粘度が上昇すると考えられることから、エンジンオイルなどへの応用が期待できます。

PORcuとヘキサノールを用いた加熱・冷却により進行する超分子重合の模式図

図 PORcuとヘキサノールを用いた加熱・冷却により進行する超分子重合の模式図

理化学研究所
創発物性科学研究センター 超分子機能化学部門 創発ソフトマター機能研究グループ
上級研究員 宮島 大吾 (みやじま だいご)
特別研究員 ヴェンカタ・ラオ・コタギリ (Venkata Rao Kotagiri)
グループディレクター 相田 卓三 (あいだ たくぞう)