広報活動

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2017年7月5日

理化学研究所

新原理に基づく単一分子発光・吸収分光を実現

-“伝播しない光”局在プラズモンを利用した新手法-

局在プラズモンとフタロシアニン分子の相互作用を示すスペクトルの図

図 局在プラズモンとフタロシアニン分子の相互作用を示すスペクトル

金属微細構造の自由電子は集団的に振動します。この振動のことを「局在プラズモン」といいます。電子の振動に伴って、金属微細構造の周りには強い電磁場が生じます。局在プラズモンは“伝播しない光”とも呼ばれ、伝播しないものの伝播する光と似た性質を持ちます。

有機分子を太陽電池や光触媒、発光ダイオードなどの光エネルギー変換デバイスに利用する場合、分子がどのような光を吸収し発光するのかといった光学的な特性を調べることが重要です。これまでの発光・吸収特性計測では、数十ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)より小さな微細構造や単一分子の光学特性を詳しく調べることは困難でした。

今回、理研の研究チームは、独自に開発した光計測ができる走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、局在プラズモンと分子の相互作用を利用した単一分子の発光・吸収特性計測に成功しました。STM探針と金属基板の間にトンネル電流が流れると、探針と基板間の局在プラズモンが励起され発光します。この局在プラズモンとフタロシアニン分子を、数nmの距離に近づけて相互作用させました。すると、局在プラズモンのブロードな発光ピークの上にシャープなピークやディップ(へこみ)が現れることを発見しました(図参照)。理論解析の結果、観測されたディップは局在プラズモンから分子へのエネルギー移動、すなわち“分子によるエネルギー吸収”によって生じ、ピークはプラズモンを吸収して励起された“分子からの発光”によって生じることが分かりました。

本手法の発展により、分子レベルの精度でエネルギーの動きを制御し、新しいエネルギー変換・情報処理デバイスを研究する単分子励起子光学の開拓・発展に貢献すると期待できます。

理化学研究所
主任研究員研究室 Kim表面界面科学研究室
研究員 今田 裕 (いまだ ひろし)
主任研究員 金 有洙 (キム ユウス)