広報活動

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2017年7月18日

理化学研究所

植物細胞の伸長を促進する新しいタンパク質を発見

-植物の葉のサイズ・草丈を制御する技術開発に貢献-

タンパク質BIL4によるブラシノステロイド受容体BRI1の分解抑制モデルの図

図 タンパク質BIL4によるブラシノステロイド受容体BRI1の分解抑制モデル

植物ステロイドホルモンの一つである「ブラシノステロイド」は、植物の成長に重要な役割を果たしています。しかし、非常に高価なため農業などに利用されていません。また、ブラシノステロイドが植物内でどのような「シグナル伝達」を行っているかはよく分かっていません。

今回、理研の共同研究グループは、ブラシノステロイドの生合成を自在に制御できる阻害剤「ブラシナゾール」を用いた「ケミカルバイオロジー」の手法を使い、ブラシノステロイドのシグナル伝達を活性化し、制御するタンパク質「BIL4」を発見しました。ケミカルバイオロジーとは、化学物質の力により、生命の仕組みを明らかにする研究手法です。生物の形態やタンパク質の働きに対して生理活性を示す小分子化合物を有機合成により作製し、それを用いて標的タンパク質の同定や機能解明を行います。

BIL4は細胞膜を7回貫通する構造をした膜タンパク質です。BIL4の細胞内での動きを調べたところ、エンドソームにおいて、ブラシノステロイド受容体「BRI1」と相互作用することが分かりました。タンパク質BIL4が発現していないときは、BRI1は細胞膜に主に局在していますが、一部はエンドサイトーシスで細胞内のエンドソームに取り込まれます。その後、液胞に運ばれて分解されます(図左参照)。一方、細胞伸長の極初期の細胞ではBIL4が発現し、BRI1のエンドソームから液胞への輸送と分解が妨げられます。その結果、細胞内のBRI1の量が増加し、ブラシノステロイドのシグナル伝達が活性化され、細胞の伸長が促されます(図右参照)。

BIL4遺伝子は、イネやトウモロコシなどにも広く保存されています。これらの実用化作物におけるBIL4遺伝子の研究・発展は、地球環境の保護や食糧増産に貢献すると期待できます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 機能開発研究グループ
専任研究員 中野 雄司 (なかの たけし)
研究員 山上 あゆみ (やまがみ あゆみ)
グループディレクター 篠崎 一雄 (しのざき かずお)