広報活動

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2017年7月25日

理化学研究所
東京大学
トロント大学
ミネソタ大学

化合物の標的機能を決定するツールを開発

-酵母の化学遺伝学アプローチで化合物の標的予測/同定が迅速に-

創薬研究においては、化合物(薬剤)が作用する生体内や細胞内の標的分子(タンパク質)を同定することが非常に重要です。化合物の標的分子の同定には、それらの物理的相互作用を直接的に検出する方法があります。しかし、化合物と標的タンパク質の結合力が弱い場合や試験管内で細胞内の生理的条件を再現できていない場合などは同定が困難です。

今回、理研を中心とする国際共同研究グループは、細胞内で化合物が標的タンパク質に作用した際に引き起こされる現象をもとに、化合物の作用メカニズムを推測し、化合物の標的タンパク質を同定する方法を開発しました。単独の遺伝子の変異では細胞は死に至らないが、そのような遺伝子が複数個、同時に変異することにより死に至る関係性を「合成致死性」といいます。これまでに理研の研究チームは、出芽酵母の二重遺伝子破壊株の合成致死性を調べて、網羅的な「遺伝子-遺伝子相関性」を明らかにし、そのデータベースを作成しています。国際共同研究グループは、出芽酵母の遺伝子破壊株を化合物で処理することで、化合物の感受性を測定するという化学遺伝学アプローチをとりました。そして、その「化合物-遺伝子相関性」の情報を上記のデータベースと照合することにより、化合物の標的分子とその機能を予測/同定できることを示しました。

さらに、この簡便な化学遺伝学アプローチと「バーコードシークエンス法」を組み合わせることにより、数百の化合物の標的分子の予測/同定を迅速に効率よく行う方法を確立しました。この方法により、理研の天然化合物バンク(NPDepo)をはじめ合計7つの化合物ライブラリーに所蔵される化合物13,524個についてスクリーニングを行い、出芽酵母遺伝子との相関プロファイルを作成し、化合物の標的機能の注釈付けを行いました。さらに、NPDepoライブラリーには17の生物学的プロセスのうち大部分を標的とするさまざまな化合物が含まれているのに対し、米国の国立衛生研究所(NIH)や国立がん研究所(NCI)の化合物ライブラリーの化合物の標的機能には偏りがみられました(図参照)。

今回開発した方法は、新しい有用化合物の作用メカニズムの解明を迅速に進めるための有効な手段になると期待できます。

出芽酵母の化合物-遺伝子相関性の図

図 出芽酵母の化合物-遺伝子相関性

理化学研究所
環境資源科学研究センター 分子リガンド標的研究チーム
国際特別研究員(研究当時) ジェフ・ピョウートロウスキ(Jeff Piotrowski)
国際特別研究員(研究当時) シーナ・リー (Sheena Li)(現 分子リガンド標的研究チーム 研究員)
副チームリーダー 八代田 陽子 (やしろだ ようこ)
チームリーダー チャールズ・ブーン (Charles Boone)

環境資源科学研究センター ケミカルゲノミクス研究グループ
グループディレクター 吉田 稔 (よしだ みのる)

環境資源科学研究センター ケミカルバイオロジー研究グループ
グループディレクター 長田 裕之 (おさだ ひろゆき)