広報活動

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2017年8月1日

理化学研究所
自然科学研究機構基礎生物学研究所

哺乳類高次クロマチンでのRNAの機能を発見

-タンパク質をコードしないRNAが染色体の安定化に寄与-

ノンコーディングRNAが媒介する哺乳類のヘテロクロマチン形成機構の図

図 ノンコーディングRNAが媒介する哺乳類のヘテロクロマチン形成機構

真核生物の細胞核内でDNAは、ヒストンタンパク質H2A、H2B、H3、H4が2分子ずつ集まったヒストン8量体に巻きついて、クロマチンを形成しています。このクロマチンが強く凝縮している構造を「ヘテロクロマチン」といい、染色体機能の維持、発生や疾患におけるエピジェネティックな遺伝子発現抑制など、さまざまな生命現象に重要な役割を果たしています。

ヘテロクロマチンは、ヒストンメチル化酵素の「Suv39h1」がH3K9(ヒストンH3の9番目のリジン残基)のトリメチル化を触媒し、そのメチル化修飾部位H3K9me3をHP1タンパク質が認識・結合することにより形成されることが知られています。一方、ヘテロクロマチン形成に、酵母やショウジョウバエなどではRNA干渉が関与しますが、哺乳類ではその仕組みの詳細は分かっていませんでした。

今回、理研を中心とする共同研究グループはマウスの系を用いて、①Suv39h1が単独でタンパク質をコードしないノンコーディングRNAと結合できること、②RNAに結合できない変異Suv39h1を発現させると、ヘテロクロマチン形成に異常がみられ、ヘテロクロマチン領域へのSuv39h1自身の蓄積が低下することを明らかにしました。これらの結果から哺乳類では、クロモドメイン(CD)とSETドメイン(SET)を持つSuv39h1が、ノンコーディングRNA(メジャーサテライト RNA)とCDを介して結合し、またH3K9me3と結合することで、効率的にヒストンH3K9をトリメチル化し、ヘテロクロマチンを形成するという新しい機構が示されました(図参照)。

本研究で明らかになったヘテロクロマチン形成機構は進化的に保存されており、今後、先天性疾患を引き起こす染色体不安定性の原因を解明するのに重要な一歩になると期待できます。

理化学研究所
主任研究員研究室 眞貝細胞記憶研究室
主任研究員 眞貝 洋一 (しんかい よういち)
研究員 白井 温子 (しらい あつこ)