広報活動

Print

2017年8月18日

理化学研究所

種子の寿命をコントロールする

-長寿命かつ発芽力の高い種子の開発に貢献-

シロイヌナズナにおけるブラシノステロイド生合成遺伝子欠損体det2およびcyp85a1/a2の種子寿命の写真

図 シロイヌナズナにおけるブラシノステロイド生合成遺伝子欠損体det2およびcyp85a1/a2の種子寿命

種子が発芽するには、空気、水、適当な温度が必要です。しかし、地上に落ちた形成直後の種子は、このような生育に適した条件下であってもすぐには発芽しないことが、多くの植物種でみられます。この性質は「休眠性」と呼ばれ、植物が過酷な環境の変化を乗り越え、子孫を繁栄させるために重要です。

一方で、作物生産においては、休眠性が高いことやばらつきによる不発芽、不斉一な発芽は好まれません。これを防ぐために市販されている種子には、乾燥種子を一時的に吸水させた後、発芽が生じる前に種子を再び乾燥させる「プライミング」という処理が施されています。しかし、プライミング処理には副作用的に種子寿命を減少させる場合があり、問題になっています。そこで、プライミングによる種子寿命の減少の分子機構の解明が求められていました。

今回、理研を中心とする共同研究グループは、シロイヌナズナの標準系統Col-0 と長命系統Est-1を用いた遺伝子発現の比較から、「ブラシノステロイド」と呼ばれる植物ホルモンが種子寿命の減少に関連があることを示しました。プライミング処理中にブラシノステロイド処理をすると種子寿命の減少が促進され、逆にブラシノステロイドの内生量が低下した変異体やブラシノステロイド生合成阻害剤処理をした種子では、種子寿命の減少が抑えられることが分かりました(図参照)。これらのことから、ブラシノステロイドが種子寿命を減少させる原因の一つであることが分かりました。さらに種子寿命の減少には、ブラシノステロイドが種皮の透過性を増大させることが関連していることも分かりました。

今後、ブラシノステロイドの内生量や働きを制御する薬剤を用いた新たなプライミング技術を開発することにより、種子の流通・保存時のコスト削減などを通して種苗産業に貢献すると期待できます。

理化学研究所
環境資源科学研究センター 適応制御研究ユニット
ユニットリーダー 瀬尾 光範 (せお みつのり)
特別研究員 佐野 直人 (さの なおと)

環境資源科学研究センター バイオマス工学研究部門 セルロース生産研究チーム
チームリーダー 持田 恵一 (もちだ けいいち)