広報活動

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2017年8月24日

理化学研究所
水産研究・教育機構

沖縄三大高級魚スジアラの効率的給餌法にヒント

-代謝マーカー情報を利用して環境低負荷型養殖の実現へ-

日本には、南北からの豊かな潮流と急峻な河川から注がれる栄養塩により育まれた水産物が豊富にあり、世界文化遺産に登録された和食の大切な素材となっています。このような水産物を戦略的に市場に流通させる方法の一つが養殖です。

養殖時の“ある期間内に与えた飼料量に対してその期間中に魚がどれたけ増重したか”を表す飼料効率は、海外のサーモン養殖では80%以上であるのに対して、国内のマグロやブリの養殖では30%未満です。すなわち、投入飼料の約2/3が利用されず、ふんや残餌として海中に残ることで海洋の環境負荷が増加し、貧酸素や赤潮発生につながり得ます。また、養殖にかかるコストの7~9割は飼料代が占めます。このような背景から、環境低付加型かつ高飼料効率の養殖技術の開発が求められています。沖縄三大高級魚の一つであるスジアラは、上品な味と淡泊な肉質が人気です。しかし現状の養殖では、成長が遅い上に魚の体内に内蔵脂肪が多いことが問題になっており、給餌法の最適化が求められています。

今回、理研ら共同研究チームは、摂餌に伴うスジアラの代謝変化を詳細に分析しました。その結果、①概日リズムに伴って短時間で変化する代謝と②絶食中や摂餌後にゆっくりと変化する代謝の二つの代謝マーカー情報が抽出されました。①では、エネルギー産生に関連する核酸関連物質(イノシン酸)やクエン酸回路上の代謝物質(リンゴ酸やマンノースなど)の濃度が変動し(図上右)、②では、エネルギー蓄積に関わる遺伝子の発現や分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン)濃度が変動することが分かりました(図上左)。これは、スジアラのようなハタ科魚類において、ヒトと同様の概日リズムを刻む数時間の早い代謝応答と、より長時間のエネルギー蓄積に関わる代謝応答があることを示しています。

本成果は今後、二つの代謝リズムに基づくスジアラの効率的な給餌手法の開発や、余分な餌を残さない環境低負荷型養殖への発展につながるものと期待できます。

本研究成果のまとめの図

図 本研究成果のまとめ

理化学研究所
環境資源科学研究センター 環境代謝分析研究チーム
チームリーダー 菊地 淳 (きくち じゅん)
テクニカルスタッフ 坂田 研二 (さかた けんじ)