広報活動

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2017年9月7日

理化学研究所

血液細胞の分化に必要な遺伝子をオンにするスイッチ

-RUNX1がDNA脱メチル化を誘導する機構を解明-

CG配列のシトシン塩基は可逆的なメチル化を受けるの図

CG配列のシトシン塩基は可逆的なメチル化を受ける

ヒトゲノムには遺伝子が約2万あると推定されていますが、その全てが同時に働いているわけではありません(最新の解析から、各細胞ではタンパク質をコードする遺伝子のうち約1万個が発現)。一つ一つの細胞を見ると、細胞の生存に必須な遺伝子と、細胞の個々の機能に関わる遺伝子が働き、その他の遺伝子は「オフ」になっているためです。そして細胞はオフになった遺伝子を「オン」を切り替えるさまざまな仕組みを備えており、その一つが「DNAの脱メチル化」です。

DNAは、塩基配列(A、T、G、Cの並び方)により遺伝情報を保存しています。この塩基配列は一生を通じて変化しません。一方、塩基配列のうち「CG」の並びになっているC(シトシン)は多くの場合メチル基(-CH3)が付加されメチル化シトシンとなっています。シトシンとメチル化シトシンは、細胞の状態によって可逆的に転換します。遺伝子の発現制御に関わる領域のCG配列がメチル化されていると、その遺伝子の発現は抑制されていますが、メチル基が外れる(脱メチル化する)と、発現がオンになるのです(図参照)。DNAの脱メチル化は、細胞の分化を制御する大事な役割を担っていると考えられますが、どの遺伝子がどのタイミングで脱メチル化されるかなど、詳しいメカニズムは分かっていませんでした。

理研の共同研究チームは、血液の細胞が作られる際にゲノムの広い領域にわたってDNAメチル化の状態が変化することに着目し、脱メチル化を制御しているタンパク質を突き止めました。RUNX1(ランクス1)と呼ばれるそのタンパク質は、血液細胞の遺伝子発現を制御することが知られており、決まったDNA配列に結合する転写因子の一種です。RUNX1の働きを詳しく調べたところ、DNAに結合したRUNX1は脱メチル化に関わる酵素群を引き寄せることが分かりました。さらに、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から血液細胞を分化させる際にも、RUNX1によるDNA脱メチル化が重要な働きをしている可能性が示されました。

白血病などの血液疾患では、RUNX1の機能に異常が生じていることが報告されています。今後、RUNX1によるDNA脱メチル化と疾患との関係が明らかになれば、新たな治療法の開発が期待できます。

理化学研究所
ライフサイエンス技術基盤研究センター 機能性ゲノム解析部門 オミックス応用技術研究グループ 細胞機能変換技術研究チーム
研究員 鈴木 貴紘 (すずき たかひろ)
チームリーダー 鈴木 治和 (すずき はるかず)