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2017年9月19日

理化学研究所

ノルアドレナリン神経の多様性を発見

-恐怖記憶とその消去には異なるノルアドレナリン神経が関与-

幼い頃、遊びに夢中になったあげく迷子になって、怖い思いをしたことがある人もいるのではないでしょうか。恐怖体験を記憶することは危険の予知などにつながります。一方で、成長するに伴い恐怖記憶が不要になると、消去学習という新たな学習により記憶が上書きされ、恐怖記憶は弱まります。

生物学的実験で、恐怖を誘発しない音をラットに提示した後に、恐怖体験として軽い電気ショックを脚に与える訓練を行うと、ラットは音によって電気ショックの到来を予測することを学習し、音に対してすくみ反応(体を動かさずにしばらくじっとしている行動)という恐怖反応を示すようになります。これを恐怖条件づけ学習といいます。その後、音のみを繰り返し提示すると、音に対するすくみ反応は徐々に減少していきます。これを消去学習といいます。

これら二つの学習には、脳幹にある青班核という脳領域から分泌される神経伝達物質のノルアドレナリンが重要であることが分かっています。また、これまでの定説は、青班核ノルアドレナリン神経の神経細胞群は全て均一で、脳の各領域に一様に分布し、音などに対して一様の反応をするというものでした。しかし、ノルアドレナリン神経の働きはよく分かっていませんでした。

今回、理研を中心とした国際共同研究グループはラットを用いて、二つの学習時における青班核アドレナリン神経の役割について調べました。その結果、①これまでの定説を覆し、ノルアドレナリン神経細胞群は均一ではなく、扁桃体および前頭前野につながる(投射する)それぞれの細胞群が存在すること(図参照)、②恐怖条件付け学習には扁桃体に投射する細胞群が、消去学習には前頭前野に投射する細胞群が関わっていることが分かりました。

現在、不安障害などの精神疾患に対して、ノルアドレナリンを標的とした治療薬が使用されています。今後、今回発見した二種類のノルアドレナリン神経細胞に特異的な遺伝子マーカーを同定し、選択的に標的とすることができれば、より効果的な治療法の開発につながると期待できます。

青斑核ノルアドレナリン神経細胞群の投射パターンの図

図 青斑核ノルアドレナリン神経細胞群の投射パターン

理化学研究所
脳科学総合研究センター 記憶神経回路研究チーム
チームリーダー Joshua P. Johansen (ジョシュア・P・ジョハンセン)
研究員 植松 朗 (うえまつ あきら)
国際特別研究員 バオ シェン・タン (Bao Zhen Tan)