広報活動

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2017年9月20日

理化学研究所

哺乳類の受精における精子ゲノム再構築機構を解明

-受精に必須のヒストンメチル化を発見-

私たちの体は約60兆個の細胞から構成されていて、皮膚、骨、血液、臓器など細胞の種類は約200にも及びます。このような全ての細胞に分化できる能力は分化全能性と呼ばれ、卵子と精子の受精後に獲得します。

非常にコンパクトな構造を持つ精子核は、受精後に通常の細胞核へと再構築されます。この際、精子ゲノムには二つの大きな変化が生じます。一つは、精子固有の核タンパク質プロタミンが卵子由来の核タンパク質ヒストンに置換されることにより、クロマチン構造が形成されます。もう一つが、大規模な能動的DNA脱メチル化です。しかし、このようなゲノム再構築に関わる詳しい分子機構は分かっていません。

今回、理研を中心とした共同研究チームはマウス受精卵を用いて、精子ゲノムの再構築に関わる母性(卵子由来)因子として「Mettl23」を新たに同定しました。詳しい解析により、①Mettl23は、ヒストンH3の17番目のアミノ酸であるアルギニン残基H3R17をジメチル化(H3R17me2a)する非対称性ヒストンアルギニンメチル化酵素であること、②H3R17me2aは、精子ゲノムへの卵子からのヒストンH3.3の取り込みに必須であること、③Mettl23は、能動的DNA脱メチル化に関わる因子GSEおよびTet3が精子ゲノムへ結合するのに必須であること(図参照)が分かりました。これらの結果から、酵素Mettl23とそれが触媒するヒストンメチル化修飾H3R17me2aが精子ゲノムの再構築過程に重要な役割を果たすことが明らかになりました。

今回、受精時の新たなゲノム再構築因子が発見されたことで、今後、ゲノムの分化全能性の獲得機構の理解がさらに進むものと期待できます。

マウス野生型とGSEおよびMettl23欠損受精卵の5mCおよび5hmCの免疫染色の図

図 マウス野生型とGSEおよびMettl23欠損受精卵の5mCおよび5hmCの免疫染色

理化学研究所
バイオリソースセンター 遺伝工学基盤技術室
室長 小倉 淳郎 (おぐら あつお)
訪問研究員 畑中 勇輝 (はたなか ゆうき)
(日本学術振興会特別研究員PD)

主任研究員研究室 眞貝細胞記憶研究室
主任研究員 眞貝 洋一 (しんかい よういち)
大学院生リサーチ・アソシエイト 津坂 剛史 (つさか たけし)

環境資源科学研究センター 技術基盤部門 生命分子解析ユニット
ユニットリーダー 堂前 直 (どうまえ なおし)
専任技師 鈴木 健裕 (すずき たけひろ)